女性の尿失禁は腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、および両者の合併した混合性尿失禁に集約されます。
その中で腹圧性尿失禁(混合性尿失禁も含む)は女性の代表的な尿失禁であり、10人中2~4人に認められるといわれています。
腹圧性尿失禁に有効な『骨盤底筋群体操』の基本的な方法
骨盤底筋群の認識
腹圧性尿失禁に対する治療の基本といえます。ただ、体操を始める際は、骨盤底筋群(とくに肛門挙筋を介した膣括約筋)の認識が重要です。
認識方法として、現在勧められるのは以下のものです。
(a)排尿中に尿をとめる。
(b)膣に指を挿入し、膣を締めてみる。
(c)肛門を締め、さらに膣を体内に引き入れるようにする。
(d)腰かけた姿勢でビール瓶、あるいはコブシを膝または内ももで挟む。
(a)~(c)がむずかしい場合は、(d)の大腿四頭筋などで補助して膣括約筋を認識して下さい。要するに肛門より少し前方の筋肉が締まっている感覚がつかめればよいわけです。
骨盤底筋群体操の方法
①恥骨 ⑥膣括約筋
②クリトリス ⑦外肛門括約筋
③外尿道括約筋 ⑧肛門
④尿生殖隔膜筋膜 ⑨肛門挙筋
⑤膣 ⑩大殿筋
3ヶ月たっても効果がみられない場合の対応
(a)骨盤底筋群(膣括約筋)の認識を再指導して下さい。
(b)薬物療法として尿道の圧を上昇させるα-アドレナリン作動薬(三環系坑うつ剤など)、坑コリン剤がありますが、体操との併用を原則として下さい。
(c)手術療法として膀胱頸部(尿道)スリング手術、コラーゲン尿道周囲注入療法などがあります。
【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など