前向きな生活への発想転換
老化に伴って起こりやすい排尿障害があります。
例えば、間に合わなくておもらしをする、夜中に何回もオシッコに起きる、
トイレに立ってもなかなか出にくくて困ってしまう、などの経験をお持ちの方も多いと思います。
もう年だから、恥ずかしいからとあきらめてはいませんか?
でも、ちょっと待って下さい。
自分のからだの状態や日常生活の過ごし方を見直して、正しい対応策をとれば、元気にいきいきと暮らしていくことができます。
ここでは、高齢者によくみられるオシッコの問題に対して、考え方のちがいによって生活状況が大きく左右されることについてみていきましょう。
上手に解決できなかった人の話③
Oさんは73歳の男性です。脳血栓で左半身マヒになり、入院してリハビリを行った後、杖をついて退院しました。自宅でお嫁さんのお世話を受けながら、歩く練習をしていましたが、何度かトイレに間に合わず失敗してから、すっかり自信をなくし、部屋に閉じこもってしまいました。
次第にポータブルトイレも嫌がるようになり、おむつを使うようになってからはベッドに寝たままのことが多くなりました。食事も食べさせなければならず、介護の負担は増えるばかりです。その上、少し認知症も始まってきたようです。
何とか元気になってもらおうとがんばってきたお嫁さんも、どうしたらよいのかわからず、今ではすっかりあきらめてしまいました。
上手に解決できた人の話③
Fさんは74歳の女性です。脳梗塞で入院しリハビリを受けましたが、右半身のマヒと軽い言語障害が残り、車椅子で退院しました。
お世話をするお嫁さんは、介護の注意点についていろいろな人に相談し、アドバイスを受けました。ベッドに手すりを取り付けたり、安定した椅子型のポータブルトイレを使ってみること、日中はできるだけ横にならないようにして、デイサービスセンターを利用することなどです。
また、動作に時間がかかりトイレに間に合わないことがあっても、着替えやパッドを準備して積極的に外出するなど、焦らず、あきらめずにやっていくことが大切だと知りました。退院するときはどうなることかと心配していましたが、今日も家族みんなで楽しく食卓を囲んでいます。
自立に向けて支援しましょう
私たちが高齢者の排泄のお世話をする時に、常に忘れてはならないことがあります。それは、高齢者の場合、排尿障害の症状や程度と日常生活における問題の大きさとが必ずしも一致しないということです。
例えば、図のような「オシッコが近い」という症状だけでなく、移動や下着の着脱といったADL(日常生活活動)の状況を正確に評価し、その状況に応じてできるだけ高齢者の自立を高め、生活を活性化していくことが大切です。
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【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など