夜尿症についてのお問い合わせ:お母さんの心配事
小学生前後5~12歳くらいのオネショを夜尿症といって、心配されるお母さん方が多くいらっしゃいましてお問い合わせいただきます。
一般的な夜尿症というものは、結論からいいますと、必ず治ります。また、薬物や手術などは、ほとんどなく、生活習慣の指導で、ほぼ改善できます。
ただ、そのような生活習慣では直らない、別の病気の場合も【まれ】にありますので、これは以前から申しておりますように、早期発見、早期治療が大切です。
また、夜尿症は、小学校高学年になると、お問い合わせいただく、お母さんよりも、なによりも、本人が恥ずかしくかんじているもの。日中、夜間の水分の取り方や、その日の尿の状況を付ける日記などで、わかりやすく本人にあった指導をしています。
なぜ「夜尿」をするの?
おねしょは、夜眠っている間につくられる尿の量と、その尿をためる膀胱の大きさとのバランスがとれていないために起こります。
したがって、夜間に作られる尿量が多すぎたり、膀胱が小さすぎるとおねしょになってしまうのです。
「おねしょ」と「夜尿症」は違うの?
幼児期に、夜寝ている間におもらしすることを「おねしょ」といいます。
ですが、5~6歳を過ぎても月に数回以上、おねしょをすることを「夜尿症」といっています。夜尿症は6歳児の10~20%、小学校高学年の約5%に見られるといわれています。
2歳で2人に1人、3歳で3人に1人、4歳で4人に1人…とおねしょをする子は大きくなるにつれて減ってきます。
夜尿症にはどんなタイプがあるの?
夜尿症には「多尿型」「膀胱型」「混合型」の3つのタイプがあります
多尿型
一晩の尿量はふつう200cc以下ですが、250cc以上ある場合を多尿型といいます。このタイプは、比較的身長が低く、二次性徴(思春期の徴候)も遅れがちで、習慣的に水分を多くとっている傾向があります。
また、抗利尿ホルモンという、「尿を濃くして、尿量を少なくするホルモン」の分泌が夜間に低下しているケースが見られます。
膀胱型
夜間の尿量が少ないのに、膀胱が小さいために夜尿をしてしまいます。おしっこをためる力が弱いのが特徴で、がまん尿量が少ない場合を膀胱型といいます。
このタイプは、日中もおしっこが近く、冷え症を伴っていることが多い傾向があります。また、日中に、パンツにおしっこをちびってしまうこともあります。
混合型
夜間の尿量が多く、しかも膀胱が小さい場合を「混合型」といいます。「混合型」は多尿型や膀胱型より重傷のタイプといえます。
治療の第一歩は、夜尿症のタイプを知ることです!
夜尿症の病型の見分け方は?
夜間尿量、がまん尿量を測定することで、多尿型か膀胱型かを見分けることができます。
多尿型:夜間尿量が正常の目安値より多い場合
膀胱型:がまん尿量が正常の目安値より小さい場合
夜間尿量を測定
- ①まず寝る前にトイレに行き、膀胱をからにします。
- ②紙おむつの重さを測定してから、おむつをして寝ます。
- ③朝起きたとき、濡れた紙おむつの重さを測定します。
- ④朝一番にトイレに行って、尿量を計量カップで測定します。
正常の夜間尿量の目安
- 小学校1~3年生
- 200cc以下
- 4年生以降
- 250cc以下
がまん尿量を測定
学校から帰った後、家でおしっこをがまんさせ、もうだめだ、というときの尿量を測定します。
正常のがまん尿量の目安
- 小学校1生
- 150cc以上
- 2年生
- 200cc以上
- 3年生以降
- 250cc以上
夜尿症はいつまで続くの?
おねしょ(夜尿症)はいつまで続くの?
おねしょ(夜尿症)はそのうち治る、とよくいわれます。実際、第二次性徴を迎える12歳を過ぎるころには、夜尿は見られなくなることが多いのですが、成人まで続くこともまれではありません。
「夜尿症が1年でどの程度よくなるの?」については、いくつかの報告があります。夜尿症の自然治癒率(特に何も対応しない場合)は、1つ年をとるごとに10~15%程度とされています
ご家族の多くは、すぐにでも夜尿症が治ってほしいと考えておられるようですが、通常いわれているより、治るまでには長い期間かかる場合が多いといえます。夜尿症は医療機関で適切な治療を受けることで、治癒率は2~3倍高くなります。
治りにくい夜尿症は?
夜尿の治る時期は、そのお子さまの年齢、夜尿の頻度、原因に大きく影響されるため、個々のお子さまで異なります。一般的に【表1】のような場合、治りにくい夜尿症と考えられます。
このような場合は、自然になくなるのを待つよりは、医療機関に相談することが勧められます。
また、夜尿症のタイプ別では、多尿型が最も治りやすく、膀胱型、混合型の順で治りにくくなります。
お子さまと接する際の留意点は?
「起こさない」「あせらない」「おこらない」の3点を念頭にお子さまに接することをお勧めします。また、夜尿をしなかった朝は、たくさんほめてあげるよう心がけましょう。
日常生活でできる対策として、次の5つのポイントが重要です。
①無理やり夜中に起こさない
抗利尿ホルモンは、夜間ぐっすり眠っているときにたくさん分泌され、尿を濃くして尿量を減らす役割を持っています。
無理に夜中に起こすと、抗利尿ホルモンの分泌量が減り、夜尿症が悪化することがあります。
※ただし、膀胱機能の改善を目的とする治療の一環として、夜間におもらしを知らせるアラーム装置を使うこともあります。
②水分のとり方:朝・昼に多く、夕方から制限、夕食は早めに
夕食は寝る3時間前までに終わらせ、塩分もとり過ぎないようにします。
でも、水分はからだにとってとても大事ですので、朝食と夕食にたっぷり、おやつの水分は控えめ、夕方から厳しく制限するようにしましょう。
③規則正しい生活のリズムを確立
夜更かしや不規則な生活は夜尿を悪化させます。
早寝早起き、決まった時間の食事を心がけましょう。
④寒さ(冷え症)への対策
夜尿の子供には冷え症(手足が冷たい)が多く見られます。寝る前にゆっくり入浴して、体を温めましょう。
また、寒さが厳しい冬は、布団を温めてあげましょう。
⑤おしっこがまんの訓練
膀胱を大きくするためには、おしっこのがまん訓練が必要です。尿意を感じてもすぐにトイレに行かせずに、お話をするなどして、ぎりぎりまで我慢させましょう。
ただし、がまんしすぎると膀胱から尿が逆流して、腎臓によくないので、無理しすぎないようにしましょう。
医療機関に受診する目安は?
夜尿症は、医療機関で治療できる病気です。下表を参考に医療機関への受診を考慮することが推奨されます。一人で考え込んでしまうような場合には、年齢や夜尿日数に関係なく医療機関を受診してみましょう。
なお、受診に際しては、お近くの小児科もしくは泌尿器科の医療機関に電話で診療の可否を確認のうえ受診することをお勧めします。
※当院では、院長による無料メール相談も行っています。
夜尿記録をつけてみよう
医療機関では、子供の夜尿記録などを参考に治療を開始する場合もあります。下記表に、数日程度の夜尿記録を記載されると、診断や治療に役立ちます。
※クリックで拡大します。印刷するなどしてお使いください。
・夜中に起きて排尿した場合は、一晩の尿量欄に+αと記録する。
・寝具のぬれ具合は、おむつを使用しなかった場合に、一晩の尿量欄には記録しない。
医療機関で実施する検査は?
夜尿症タイプを調べる検査のほかに、次のような検査が行われます。実施する検査は個々の患者様により異なります。
一般的に行う検査とその目的
①尿検査
尿は全身の状態を知るバロメーターで、重要な情報を与えてくれます。尿たんぱく、尿糖、尿沈渣(尿中に含まれる赤血球や白血球など)、尿浸透圧などを検査します。これは尿路感染症や糖尿病など、多尿をもたらす基礎的な疾患が夜尿の原因となっている場合があるからです。
②血液検査
お薬で治療する前に、全身の健康状態の指標として、肝機能、腎機能などの一般的な血液検査を行います。治療中も年に2~3回、血液検査を行うことがあります。
必要に応じて行う検査
①超音波検査
残尿や、腎臓や膀胱の奇形の有無を調べる検査です。
②尿流検査
排尿時の尿流速や、排尿時間、膀胱の収縮状態などをみる検査です。
③腰椎部のX線検査
「膀胱型」で昼間のおもらし(ちびり)を伴う場合は、潜在性二分脊椎を伴っていることがありますので、確認のために行うことがあります。
④頭部のCTやMRI検査
「多尿型」の場合で、抗利尿ホルモンを分泌している脳の下垂体に異常がないかどうかを見る検査です。
⑤脳波検査
過去にけいれんの経験がある場合には、脳波の検査を行うことがあります。
以上のほかに、長期にわたって夜尿が続くことでストレスを受けていることが少なくないため、親子関係についての検査や性格検査などの心理的な検査を行うことがあります。
医療機関で実施する治療は?
お薬で治療を始める前に、まず生活指導をしっかり守ることが大切です。そのうえで薬物治療やアラーム療法を受けることになります。
薬物療法
夜尿症の治療薬は大きく分けて3種類があります
①抗利尿ホルモン薬(内服薬/点鼻薬)
尿を濃くして、尿量を少なくする作用を持つ薬剤で、内服薬と点鼻薬があります。
②抗コリン薬(内服薬)
尿を多く膀胱にためられるように、膀胱機能などを安定させる薬剤で、がまん尿量を増大させます。
③三環系抗うつ薬(内服薬)
もともとはうつ的な状態を明るくしてくれる薬剤ですが、抗利尿ホルモンの分泌を促す作用と抗コリン作用とがあります。
アラーム療法
パンツに水分を感知するセンサーを取り付けておくと、夜尿の水分を感知し、アラームが鳴ります。子供がそのアラーム音で目覚めることによって排尿を抑制し、睡眠中の膀胱容量がおおきくなっていくといわれています。
なお、アラーム療法は、最近では覚醒排尿を促すのが目的ではなく、寝ている間の排尿抑制訓練であると考えられています。
お泊りの時の対策は?
お泊り行事は、貴重な集団生活を体験する良い機会です。たとえ毎晩の夜尿があっても、必ず参加するよう積極的に励ますことが大切です。担任の先生にも協力してもらうよう、あらかじめお願いしておきましょう。
①夜中にそっと起こしてもらう
ほかの子供に気づかれないよう、そっと起こしてもらいましょう。
②朝、早めに様子をみてもらう
万一失敗していたら、ほかの子供が起きる前に着替えさせてもらいましょう。
③いちばんよく効いた薬を持っていく
内服薬/点鼻薬など今まで一番よく効いた薬を持っていきましょう。
④夕方からは水分をあまりとらないようにしましょう。
⑤パジャマのズボンは厚手で濃い色にしましょう。
日記のつけ方
日記をつけて夜尿の変化を観察しましょう。
夜尿の経過を確認したり、重症度を判断するためには、毎日「夜尿日記」をつける必要があります。
日記は、治療方針を決めたり、治療効果や生活指導をきめ細やかにしてもらうためにも大切です。
①夜尿の有無(◎、△、× 印)
×=夜尿があった場合
ご家族が寝るころもしくは起床時に、お子様の布団をチェックし、夜尿をしていたら、その時間に×印を記入。
△=夜尿をしたあとで、自分で目覚めた場合
◎=自分で目覚めてトイレに行った場合や夜尿なし(起床時)の場合
②寝具のぬれ具合(⑦おむつのぬれ具合を記入した場合は不要)
多=シーツまでぬらした場合
中=パジャマまでぬらした場合
小=パンツのみぬらした場合
③がまん尿量
帰宅後の夕方、おしっこのがまん訓練をしたときの尿量を記入してください。
④夕方から寝るまでの水分摂取量
夕食時から寝る前までに摂取したおおよその水分量を記入してください。
⑤服薬/点鼻の確認
お薬を服用、もしくは点鼻(スプレー)した日に〇印を記入してください。
⑥夜尿の回数(0、1、2)
ひと晩の夜尿の回数を記入。寝入りばなに夜尿をして、そのまま朝まで目覚めなかった場合、ひと晩に夜尿を2回した可能性もあります。これは夜尿の量でご家庭が判断して記入してください。
⑦おむつの重さ
おむつを使用している場合、おむつの重さ(元の重さを引く)を記入します。おむつをしていない場合は、②寝具のぬれ具合を記入してください。
⑧起床時の尿量
朝起きたらトイレで排尿させ、その時の尿量を記入します。出ないときは0と記入します。
⑨ひと晩の尿量(おむつの重さをはかっている場合)
「おむつの重さ」と「起床時の尿量」の合計を記入します。
※夜中に起きて排尿した場合は、ひと晩の尿量欄に+αとする
※クリックで拡大します。印刷するなどしてお使いください。