尿意があるのに尿が出ないのは大きなストレスになりますよね。当院に通われる患者さんからも多く寄せられる悩みです。
そこで今回は、オシッコのスペシャリストである神楽岡泌尿器科が、尿意があるのに尿が出ない時の原因や対処法を解説します。
放置するとどうなるかについても解説しているので、まずは一度記事を読んであなたの状況と照らし合わせてみてください。
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など
「尿意があるのに尿が出ない」とはどのような状態?
「尿意があるのに尿が出ない」とは、尿意を感じてトイレに行っても尿が出なかったり、尿が出にくかったりする状態を指します。医学的には「尿閉」と呼ばれ、時に全く尿が出なくなることもあります。
この状態は、尿が膀胱に溜まっているにも関わらず、様々な原因によって膀胱から尿道への尿の排出が妨げられているために起こります。
「尿意があるのに尿が出ない」時の原因
まず、尿意があるのに尿が出ない状態は大きく2つに分けられます。
- 排尿障害:尿の出が悪い、途中で止まる、尿意が強いのに尿量が少ないなど
- 膀胱炎などの炎症:尿自体が溜まっていないので尿がでない
それぞれ解説します。
1.排尿障害の原因
排尿障害の原因は多くあり、代表的な例は以下の通り。
- 前立腺肥大(男性の場合)
- 尿道が狭くなっている
- 膀胱内に結石ができていたり、膀胱炎などの感染炎症がある
- 膀胱や尿道の筋力が低下している
- ストレスにより膀胱や尿道の筋肉が緊張している
- 薬の副作用
男性は特に「前立腺肥大」が多く、50歳で30%、80歳で90%近くの人に前立腺肥大が見られるという発表もあります。つまり、年齢を重ねるにつれて尿の出が悪くなる人が多いということ。
排尿時に痛みを伴う場合は、炎症を起こしていたり結石ができている可能性があるため、早めにご相談ください。
2.膀胱炎などの炎症による尿閉の原因
尿閉の原因には、「膀胱のポンプ機能の低下」と「膀胱出口の開口障害」があります。
膀胱のポンプ機能の低下は、神経機能の問題や筋肉の異常などが原因で、膀胱のポンプ機能が正常に働かなくなること。
膀胱出口の開口障害は、前立腺肥大症(男性の場合)、尿道結石、膀胱結石、腫瘍などが尿道を圧迫し、尿の流れを妨げることが原因です。
尿閉は放置すると腎機能障害に繋がるケースも多く、最悪の場合腎不全になります。尿意があるのに尿が全く出ない場合は、すぐに受診するようにしましょう。
上記の他、服用している薬(鎮痛剤や抗うつ剤など)の副作用で尿閉になってしまうケースもあります。
では、尿意があるのに尿が出ない時にはどういった対策があるのかを見ていきましょう。
「尿意があるのに尿が出ない(出にくい)」時の3つの対処法
尿意があるのに尿が出にくい場合、まずは以下の対策を試してください。
- トイレをリラックスできる環境にする
- いきまない(力を入れない)
- 少し我慢してからトイレに行く
1.トイレをリラックスできる環境にする
「しっかり尿を出さなきゃ!」と気を張ると、ストレスがかかり余計に排尿が難しくなります。好きな香りの芳香剤を置いたり、植物を置いたり、音姫などで川の音を流したりなど、排尿時にリラックスできる環境を整えてみると尿が出やすくなる場合があります。
2.いきまない(力を入れない)
排尿は本来、力を入れなくてもできるものです。排尿しようと脳から指令を受け取ると、膀胱は自然に収縮します。そして尿道括約筋がゆるみ、尿道もゆるんで溜められていた尿が自然に排出されるのです。
排尿に集中しないために、便座に座って雑誌を読みながら自然に排尿してみるのも一つの手です。
また、普段からいきまないと尿が出ない人はトイレに行くタイミングが早すぎるのかもしれません。
3.少し我慢してからトイレに行く
個人差はありますが、成人の膀胱は500ml前後の尿を溜められます。一般的に排尿した方が良い尿量は300mlであるため、少し我慢してからトイレに行きましょう。
目安としては、「少しトイレしたいな」くらいだと150ml、「我慢しきれない、トイレに行きたい!」と思うくらいが300mlです。
頻繁にトイレに行きすぎると、膀胱炎のリスクも上がります。また、尿量が少ない状態での排尿はいきむことにも繋がりますので、自然に排尿できるくらいまで溜めてからトイレに行きましょう。
それでも尿が出ないなら我慢せず泌尿器科に相談
ご紹介した対策を行ってもなかなか症状が改善しない場合は、一度泌尿器科を受診しましょう。
加えて、下腹部がやや固く、痛みがある場合(特に押すとさらに痛む)などは、その日のうちに泌尿器科への受診をおすすめします。
また、くも膜下出血や硬膜下血、てんかん、脊髄損傷などの脳や脊髄に関わる他の疾患でも尿閉が起こる可能性があります。
尿が出ない症状の他に、頭痛や背中の痛み、しびれ・脱力感などがある場合は泌尿器科と別に、内科なども受診した方がよいです。
当院、神楽岡泌尿器科でも診察は行っていますが、受診前に相談しておきたいという方は院長直通の無料メールも受け付けております。
尿意があるのに尿が出ない時に考えられる病気
尿意があるのに尿が出ない「尿閉」を引き起こす主な原因としては、以下の病気などが考えられ、これらの病気が合併して起こることもあります。
患部 | 疾患名 |
膀胱の病気 | 低活動膀胱、膀胱タンポナーデ、膀胱結石、膀胱がん |
前立腺の病気(男性の場合) | 前立腺肥大症、前立腺炎、前立腺がん |
尿道の病気 | 尿道損傷、尿道狭窄症、尿道結石 |
その他、神経系や骨盤内の構造に異常が生じると、膀胱や尿道がうまく機能できず、尿が出せなくなることがあります。
尿が出せなくなる要因 | 引き起こす原因 |
神経因性膀胱 | 糖尿病、脳卒中、脊髄損傷、骨盤内手術後 |
薬剤性 | アルコール、風邪薬(抗コリン薬) |
骨盤臓器脱 | 膀胱瘤、子宮脱 |
「尿意があるのに尿が出ない」症状を放置しておくと…..
「尿が出ないけど、痛みも無いし漏らしもしない、困ってないからいいか」と放置してしまうと、大変なことになります。
ここでは尿が出ない症状を放置した際に起こりうる3つの未来を見ていきましょう。
1.腎機能が悪化する
尿が膀胱に溜まり続けると、腎臓に負担がかかり、腎機能が低下することがあります。腎不全になるリスクが上がり、最悪の場合血液透析を受けることになってしまいます。
2.膀胱感染症(膀胱炎)になる
尿が長期間膀胱に溜まると、細菌が繁殖しやすくなり、感染症が発生するリスクが高まります。一般的に「膀胱炎」と呼ばれる状態で、排尿時に痛みが出たり、急に強い尿意に襲われたりと強いストレスを抱えることになります。
3.膀胱の筋肉が弱くなり、正常に排尿できなくなる
長期間尿閉が続くと、膀胱の筋肉が弱くなり、尿が正常に排出できなくなることがあります。
正常に排尿できないと、残尿や尿失禁、膀胱炎に繋がるリスクが上がり、先ほど紹介した症状に繋がります。
ただし、「多くトイレに行って頻繁に排尿しよう!」と考えるのも危険です。適度な我慢と排尿のタイミングは以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
まとめ
今回は「尿意があるのに尿が出ない」状態について解説しました。最後にポイントを振り返りましょう。
今回のポイント
- 尿意があるのに尿が出にくいのは「排尿障害」
- 尿意があるのに尿が全く出ないのは「尿閉」で、すぐに通院が必要
- 尿が出にくい時は「トイレをリラックスできる環境にする」「いきまない」「少し我慢してからトイレに行く」
- 尿意があるのに出にくい症状を放置すると、多くのデメリットがある
尿が出にくい、頑張らないと排尿できないなどのお悩みがある方は、お気軽にメールでご相談ください。
当院では、院長直通の無料のメール相談を随時受け付けています。勿論、相談したからといって必ず当院に受診に来る必要もありません。気軽に、オシッコの不安をご相談いただければと思います。
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また、当院の院長はオシッコスペシャリストとして、子供の排尿について「どのように教育したらいいのか困っている」という方の答えになるように、オシッコの本を出しています。
著書ではより詳しくオシッコの習慣について書いています。おしっこに悩む全ての人に捧げた本なのでお悩みの方は参考にしてみてください。
著者:渋谷秋彦
【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など