年齢を重ねることで頻尿に困っているという方は増加しています。「歳を重ねたから、オシッコで悩むのは仕方ない」とあきらめてしまっている方も多いです。
しかし、そもそもなぜ年齢を重ねることで頻尿につながるのでしょうか?単純に、年齢による筋力の低下だけが原因ではない場合も多いです。
その一つにホルモンバランスが関係していることもあるのです。
今回は、泌尿器科の院長が、実は知られていないホルモンバランスの乱れが頻尿につながる原因と治療方法を紹介します。
頻尿の原因には性ホルモンのバランスも関係している
頻尿の原因はホルモンバランスにも関係があります。
例えば、「歳を重ねると排尿で悩みがちになる」となんとなく聞いたことはありませんか?
実は年齢を重ねることでホルモンバランスが乱れ、排尿トラブルである頻尿につながることも多いです。
性ホルモンのバランスが崩れる時期
ホルモンのピーク | ホルモンバランスが崩れる時期 | ホルモンバランスが崩れる原因 | |
女性 | 20~30代 | 40代 | 閉経が起こる50歳前後に、女性ホルモン(エストロゲン)が低下するため |
男性 | 20代 | 年齢の目安は特になし。 | 精巣の機能低下によるテストステロン、男性更年期障害(LOH症候群)になるため |
女性は性ホルモンのエストロゲンが低下することで、尿道の粘膜が薄くなり、知覚過敏になりやすいです。膀胱・尿道などは、痛みなどちょっとした感覚も尿意となってしまいます。また、エストロゲンの低下により骨盤底筋群の血行障害、進展性の低下が起こり、失禁や排尿困難、骨盤臓器脱が起こりやすくなります。
東洋医学的には、閉経の時期になると腎臓で蓄えられているエネルギーが不足し、排尿を司る腎臓の血流の衰え・冷えが原因で頻尿につながると考えられています。
また、男性も更年期があり、性ホルモンであるテストステロンが低下すると膀胱の柔軟性や尿道括約筋の筋力が損なわれ、頻尿等の排泄トラブルにつながりやすくなりがちです。
頻尿の定義
適切な排尿 | 頻尿基準 | |
排尿回数 | 4~7回/日 | 頻尿:8回/日以上 |
一般的に、頻尿と言われる基準は日中に1日8回以上。もしくは、夜間にトイレで1回でも起きることを言いますが、飲水・カフェインを摂取するタイミングなどにも影響するため、一概には言えません。
年齢によるホルモンバランスなのか、尿が多いのか、生活習慣なのかなど、1つ1つの原因の可能性を見極めていってください。
チェックする場合は、下記の記事も参考にしてみてください。
悩んでいる方は頻尿をセルフチェックしてみよう!手順や方法を泌尿器科が教えます
ホルモンバランスの原因による頻尿の治療
ホルモンバランスが原因で頻尿になっている方の治療方法は、大きく3つです。
- ステップ①:自宅でできる骨盤底筋トレーニングと膀胱訓練
- ステップ②:市販薬から試したい方のための漢方
- ステップ③:根本的に治したい方のホルモン補充療法
ステップ①:自宅でできる骨盤底筋トレーニングと膀胱訓練
まず、女性におすすめしたいのは、骨盤底筋トレーニングです。ですが、じつは男性にも骨盤庭筋トレーニングは排尿、男性機能に有効なんですよ。
その理由は、尿意・便意を我慢しやすくなるためです。排泄を行うための骨盤底筋を鍛えることで、過活動膀胱やホルモンバランスの変化による頻尿に効果が期待できます。
- あお向けで横になり、両足を肩幅程度に開いて、両ひざを軽く立てましょう。
- 尿道・肛門・膣をきゅっと締めたり緩めたりを、1秒ずつ15回程度繰り返す。
- ゆっくりぎゅうっと締めて3秒間ほど静止し、またゆっくり緩めます。この行動を2〜3回繰り返し、締める時間を少しずつ延ばしていきます。
- 手順1〜3を1回5分程度から始めて、10〜20分までだんだん増やしていく。
基礎編に慣れてきたら応用編も行ってみましょう。
応用編は「自宅でできる過活動膀胱に効く骨盤底筋トレーニング!テレビをみながらできる方法も紹介します」でも紹介しているため、参考にしてみてください。
また、骨盤底筋トレーニングは実感を伴いにくいトレーニングです。
続けている最中の方ややり方を間違っている方は「こんなことで本当に頻尿が良くなるの?」と思ってしまうことも。
骨盤底筋トレーニングは、実は書籍でも紹介している泌尿器科医がお勧めしたい頻尿トレーニングです。骨盤底筋トレーニングを行うと、気持ちいいオシッコにもつながります。
『気持ちいいオシッコのすすめ』
著者:渋谷秋彦
また、男女ともに行える膀胱訓練も行って行きましょう。
膀胱訓練とは、トイレに行きたいと感じてから5分程度待ってからトイレに行く訓練です。
膀胱訓練とは、トイレを我慢することで膀胱に溜める力を養う訓練で、ホルモンバランスの乱れなどが原因で膀胱に尿が溜まっていないのに強い尿意を感じる方に、効果が規定できます。
ステップ②:市販薬から試したい方のための漢方
頻尿で生活に支障が出てしまっている方は、「もっと早く頻尿を改善したい」と考えるはずです。その際に薬で解決したいと思う方も多いでしょう。
年齢によりホルモンバランスが乱れる更年期障害になると、血液循環が悪くなり、頻尿につながっている方も多いです。薬を飲んでいる一時的な期間だけでも、血液循環が良くなり、頻尿の症状緩和が期待できる薬もあります。
例えば、漢方の「八味地黄丸」が入った薬は、水分代謝・血液循環を改善することで、加齢・筋力低下などが原因で低下していた身体機能を回復させる効果が期待できます。
こちらの記事で薬について詳しく書いているので参考にしてみてくださいね。
医師に聞いた!頻尿の治療薬は何が効果的?処方薬から市販薬まで紹介
ステップ③:根本的に治したい方のホルモン補充療法
病院で頻尿の原因を確かめ、根本的な解決を行いたいという方は、男性は泌尿器科・女性は産婦人科への受診を検討してみてください。
頻尿の原因が、問診でホルモンバランスの乱れにあるのかを確認し、血液検査でホルモン量を調べてから治療にうつります。
治療方法は、薬剤治療です。飲み薬・注射・塗布など様々で、副作用や既往を確認して選択されます。
ホルモンバランスの乱れ以外の頻尿の原因
頻尿の原因は、ホルモンバランス以外にも様々あります。
例えば、「きっと年齢のせいで頻尿になってしまったんだ…」と悩んでいた方が、実は寝る前に水を飲む習慣があったため、頻尿になっていたケースもあります。
- 過活動膀胱・・・膀胱にたまった尿量に関係なく、急に尿意が表れる状態。
- 残尿・・・膀胱を収縮させる神経に問題があり、ずっと尿が残り、溜まっている状態。
- 多尿・・・1日に作られる尿量が多くなるため。
- 炎症(尿路感染など)・・・炎症により膀胱が痛みなどの刺激を受け、膀胱が痛みを尿意に変換してしまうため。
- 腫瘍・・・膀胱がんにより膀胱への刺激が起こり、膀胱が痛みを尿意に変換してしまうため。
- 心因性・・・身体に原因はなく、トイレのことが気になってなんとなく何回もトイレに行ってしまう状態。
ストレスが原因で頻尿になるの?を泌尿器科が回答します
など原因は様々あるので、セルフチェックや早期受診を通して原因を探ってみるのもおすすめです。
頻尿が薬の副作用として出ている場合も、医師に相談すると、薬の変更や治療方針の変更なども提案されるかもしれません。頻尿は、生活に支障がでやすい症状です。早めに相談することで、おしっこの悩みが軽減・改善するかもしれませんよ。
まとめ
頻尿の原因にホルモンバランスの乱れがあると、ご紹介しました。
頻尿は疾患・副作用・心因性など様々な要因によって引き起こされるため、早期に頻尿の原因を把握し、早期治療が大切です。
治療方法は自宅でできるトレーニング・市販薬・病院による治療と様々ありますが、まずはどれを行っていいかわからない方は、ご相談ください。
当院では、無料のメール相談を随時受け付けています。勿論、相談したからといって必ず当院に受診に来る必要もありません。気軽に、オシッコの不安をご相談いただければと思います。
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【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など