頻尿の治療は、原因によって方針は異なります。ここでは、疾患別に治療方法を説明していきます。
しかし、頻尿の治療に大切なことは患者さん自身が「自分で治す」という目標を持って行動することが大事。
お薬だけに頼らず、日常で気をつけることも踏まえてお話しさせていただきます。
過活動膀胱の治療
頻尿に悩む多くの方が、過活動膀胱が関係しています。病院を受診すると以下のような薬が処方されることがあります。
- 抗コリン薬
膀胱の筋肉を収縮させるアセチルコリンという体内物質の働きを抑えるのが抗コリン薬。膀胱で尿が十分溜められる状態をつくることが目的です。 - β受容体刺激薬
膀胱を広げ尿道を縮めることで、尿を蓄えやすくし過活動膀胱による尿意の切迫感や頻尿などを改善する薬。
しかし、私はこういったただ薬だけという処方はしないんです。
膀胱は一定の許容量があるので、膀胱が緊張するその使い方が問題だと考えているんです。
必ずしも膀胱が小さいわけではないのに、膀胱の緊張を緩める薬をだすと排尿障害にもつながります。
例えば、おしっこが近い症状があり、1回のおしっこの量が150ccしかなくても、膀胱が小さいとは限りません。
病院ではさらに検査を行い、こういった方でも実は500cc以上溜められる余力のある膀胱を持っていることを明らかにします。
そうなれば、薬を処方する必要はないですよね。
あなたの今よりも倍ちかくおしっこを溜めれる膀胱を持っています。なので「すぐにトイレに駆け込まず少し待ってからするようにしてごらん」と指導します。
さらに、膀胱の下垂が原因での過活動膀胱で悩む女性の方は、骨盤底筋群の体操をすることもおすすめしています。
前立腺肥大症の治療
前立腺肥大症による治療薬は「α1受容体遮断薬」、「男性ホルモンの働きを抑える薬」「手術」が適用されることがあります。
- α1受容体遮断薬
前立腺肥大症が疑われる方に最初に使われる治療薬です。前立腺を収縮させる「ノルアドレナリン」という物質の作用をブロックする薬で、前立腺部尿道の過剰な収縮を抑えます。 - 男性ホルモンを抑える薬
前立腺肥大症は男性ホルモンが大きく関わっているため、男性ホルモンの働きを抑えることでその増殖を抑え、肥大した前立腺による圧迫を軽減します。 - 手術
薬での症状の改善が思わしくない場合、肥大した前立腺による通過障害が高度な場合は、手術が適用されることもあります。前立腺切除術のほか、レーザーや当院で行っている前立腺を核出(くりぬく)する治療もあります。
というのが一般的な例ですが、ここからは、神楽岡泌尿器科の場合を説明します。
前立腺肥大によっておしっこのトラブルに見舞われる人は、不快なおしっこの仕方を続けていることで、前立腺肥大と重なり症状が悪化している場合がほとんど。
最初から「手術して楽にしてください」と病院へ受診される方もいますが、まずは、患者さんのおしっこの状態を調べ、おしっこの習慣を問診します。
そして、トレーニングでよくなると判断した場合は、薬で症状を緩和しながらおしっこの仕方を改善していきます。
どうしたら改善できるのかゴールを明確にイメージすることで、手術せずに改善する方もいました。
とはいっても全ての方にトレーニングを進めているわけではございません。
前立腺の肥大が顕著な方、辛くてトレーニングができない方、痛みが伴ってしまう方にはおしっこ指導を無理にすすめていません。
薬を処方し様子をみるか、手術を選択することもあります。患者さんの様子をみながらケースバイケースで治療方針を決めていきます。
膀胱炎の治療
膀胱炎が原因で頻尿症状が出ている場合は主に「抗菌薬」が用いられます。3〜4日服用することで症状がよくなります。
排尿を我慢し、膀胱内に尿を溜め続けることで膀胱壁の血流が阻害され、免疫力が低下し、細菌が繁殖し膀胱炎となります。薬の服用以外にも生活習慣を見直すことも大切です。
自宅でできる頻尿改善
病院で薬を指導する以外にも、自分自身で生活を見直していくことが頻尿の治療には大切です。
見直すべきポイントを以下に絞ったので、参考にしてみてください。
水分摂取は1日2リットル
水分摂取が大事な理由は、腎臓機能を助け、尿管→膀胱→尿道を続く尿路の健康と衛生を保つためです。
しかし、実際に1日2リットルの水分を摂取するのは、難しく続けられないという人も多数います。
以下のポイントを参考に毎日取り組んでみましょう。
- 10時間かけて1時間200ccずつが目安(一般的なマグカップは200cc)
- 夕食後(寝る前)は、水分補給しなくていい
コーヒーや緑茶、豆乳、ビールといった利尿作用のある飲み物を摂取しすぎると頻尿になることがありますので気をつけましょう。
体温低下に気をつける
体が冷えると、体表の血管が収縮され心臓へ還流する血液量が増加します。さらに、腎臓血流量が増加し頻尿という結果につながります。
冷え性、1日中椅子に座っている、体を動かす機会が少ない人は、適度に足を動かしたり、歩いたりし運動量を増加するといいでしょう。
寒い環境にいることでも尿意につながるので、冷え対策もしておきましょう。
おしっこの仕方を改善する
頻尿の悩みは、小さい頃から習慣となっているおしっこの仕方にも原因があります。
頻尿の方で多いおしっこの仕方は、外出中におしっこしたくなったら困るので、尿意がなくてもトイレにいくといった習慣があります。
なので、毎回トイレにいくたびに不快な思いをしてますよね。これを私は「不快なおしっこ」といいます。
- 1回に300mlのおしっこが一気にでる
- 1日6-7回おしっこがでる
- いきんでない
- 途中でおしっこが止まったり出たりしない
- 終わった後はスッキリ!
「いきまない」「トイレは仕事や遊びの後回しにする」「溜めてからする」を徹底し、快感おしっこの習慣を身につけましょう!
快感おしっこを身につける方法についてはこちらでも詳しく書いていますので、参考にしてくださいね。
まとめ
頻尿の治療方法を病院、自宅でできる方法を説明しました。
今回紹介した内容は、神楽岡泌尿器科院長 渋谷の著書で紹介していますので、詳しく知りたい方は参考にしてみてください。
参考画像:Amazon
北海道旭川市にある神楽岡泌尿器科は、「排尿のかかりつけ医」になることを目指し、患者本位で、気軽に緊張せずに受診していただける病院づくりを目指しています。
「オシッコのことで悩んでいる」「気持ちのいいオシッコについて知りたい」という方は、院長による無料メール相談も行っておりますので、まずはお気軽に疑問点や懸念内容をご相談ください。
病院まで来られない方々にも往診で対応可能です。患者さんご本人だけでは無くご家族の方々からのご相談にもお答えします。
【著作・メディア掲載など】
- 2014年 『「気持ちいいオシッコ」のすすめ』(現代書林)刊行』
- 2016年 『現代の赤ひげ 医療最前線の名医9人』掲載
- 2016年 『週刊新潮』(10/27 号)掲載
- 2020年 『メディアあさひかわ』(4月号)掲載
- 2020年 『メディアあさひかわ』(5月号)掲載
- 2021年 『メディアあさひかわ』(5月号)掲載
【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など