さて今回は、神楽岡泌尿器科が問題視する排尿習慣、すなわち「いきんでオシッコをする」ことのデメリットについて解説していきましょう。
膀胱の仕組みとは?オシッコをガマンできる原理
もともと人間の膀胱には、オシッコを溜める仕組みができています。
人間だけではなくネコもイヌも、ほかの哺乳類みんな、オシッコは膀胱という筋肉でできたポンプに溜められるようになっています。
したがって自然な快感オシッコの仕方を身につけている人は、500ccくらいまで溜められる膀胱に300ccくらいまで溜め、余裕をもってトイレに行って排尿します。
500ccのうちの300ccですから、まだまだ余裕はあります。
300ccまで溜めてからトイレに行くということは、体に備わった機能を十分に、また無理なく使っていることになり、それは排尿のための臓器である膀胱を健康に保つことにつながっているわけです。
ところが、現代人の多くが300ccまで溜めないで、100~150ccくらい溜まった段階でトイレに行って排尿してしまいます。
これは自然な排尿ではありませんから、排尿も頭で考えて行わなければいけません。
膀胱は自然な快感オシッコをする程度に十分にはふくらんでいませんから、まるで便秘のウンチをするようにいきんでオシッコを出そうとします。
これが、いわゆる「不快オシッコ」です。
不快オシッコ時の膀胱はどんな負担を強いられている?
いきんだオシッコをしようとすると、体の中ではどんなことが起こっていると思いますか?
自然に奔流するほど溜まっていない、中途半端にふくらんだ膀胱は、腹圧によって上から押しつぶされるような状態になります。
本来の快感オシッコならそのような力は必要なく、ただ膀胱が元の形に戻ろうとするだけでオシッコは尿道へと出て行くのですが、膀胱のふくらみが十分ではないので力が必要になるのです。
ところが、膀胱が外力によって押されると、漏れるといけないから反射的に尿道の元の部分(尿道括約筋)がギュっと締まってしまいます。
いうなれば、ホースの先端を足で踏んづけておいて蛇口を全開にするようなものです。
オシッコをしようとしていきむと、よけいにオシッコは出にくくなるし、それを無理に出そうとするから、ビュッ、ビュッという出方になるわけです。
このような不快オシッコの仕方は、「高圧排尿」と呼ばれます。
これは膀胱を適度にふくまらせてから、それが戻る自然な収縮力を利用した排尿ではなく、膀胱に対して外側から圧力をかけて無理にオシッコを出すやり方です。
不快オシッコの習慣が身についてしまった人は、この高圧排尿を毎日、何度も繰り返し行っています。
快感オシッコを習慣にしている人に比べると、膀胱や尿道の筋肉に日々大きなダメージを負わせていることになるのです。
膀胱はいつも無理な力が加わるので、部分的に伸びてしまって変形していきます。
また膀胱というのはもともと風船のように柔軟性のある袋なのですが、高圧排尿を繰り返していると、膀胱の筋肉の壁が次第に厚くなって血行が悪くなることで伸展性が悪化します。
つまり、硬くなって膨らみにくくなってしまうわけです。
間違った排尿の習慣が内科的な疾患をもたらす?
たとえば男性は、中高年以降になると前立腺が少しずつ肥大していきますが、実はそれだけでは生活に困るほどの頻尿になることはまれなんです。
しかし不快オシッコの習慣が続くと、深刻な頻尿に至るケースもあります。
またそれだけではありません。
不快オシッコをする人は、水分を十分に摂らない傾向にあります。オシッコがいつも心配だからです。
本来なら、1日に2リットル程度のオシッコを出すのが理想的なのですが、不快オシッコの人はその半分くらいしかオシッコをしません。
オシッコの回数は多いのに、オシッコをつくる量は少ないということです。
オシッコの量が少ないということは当然、オシッコはそれだけ濃くなるという事実を意味します。
不快オシッコの人の腎臓は、あまり水分を捨てないようにしながら、血液中に含まれるたくさんの老廃物をこし取らなければなりません。
これは、とても腎臓を疲れさせます。
また、その毒素の多い(濃い)オシッコは膀胱に刺激を与え、尿意を強く引き起こすことになります。
体力のある若いうちはなんでもなくても、30代、40代と年齢を重ねていくうちに腎臓機能は慢性的に少しずつ落ちていきます。
すると、代謝が悪くなって疲れやすくなったり、ナトリウム分の排泄がうまくいかなくなって高血圧症になったり、体の不調があちこちに現れてくるのです。
また腎臓自体も、慢性腎臓病(CKD)と呼ばれるような病気になっていくリスクが高いわけです。
まとめ
不快オシッコの習慣を快感オシッコの習慣に改めていくことは、たしかに簡単ではありませんが、中高年以降の健康ライフのためにはその努力は決して価値の低いものではないはずです。
不快を快感に変えるのですから、ぜひチャレンジしていただきたいと思います。
北海道旭川市にある神楽岡泌尿器科は、「排尿のかかりつけ医」になることを目指し、患者本位で、気軽に緊張せずに受診していただける病院づくりを目指しています。
「オシッコのことで悩んでいる」「気持ちのいいオシッコについて知りたい」という方は、院長による無料メール相談も行っておりますので、まずはお気軽に疑問点や懸念内容をご相談ください。
病院まで来られない方々にも往診で対応可能です。患者さんご本人だけでは無くご家族の方々からのご相談にもお答えします。
⇒院長先生はどんな人?
【著作・メディア掲載など】
- 2014年 『「気持ちいいオシッコ」のすすめ』(現代書林)刊行
- 2016年 『現代の赤ひげ 医療最前線の名医9人』掲載
- 2016年 『週刊新潮』(10/27 号)掲載
- 2020年 『メディアあさひかわ』(4月号)掲載
- 2020年 『メディアあさひかわ』(5月号)掲載
- 2021年 『メディアあさひかわ』(5月号)掲載
【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など