開業以来、私はさまざまな患者さんを診てみました。
そうした中で、「もしかしたらこれが排尿トラブルの原因なのかもしれない」と思うようになったことがあります。
今回は、私が著書『気持ちのいいオシッコのすすめ』でも書いた排尿トラブルに関する考察を一部ご紹介します。
もしかしたら、これを読んでいるみなさんのなかにも「ドキッ」とするような心当たりがあるかもしれません。
【こんな人に読んでほしい】
- 正しいおしっこの仕方を知らない
- 自分の排尿の仕方が普通だと思っている
- 最近、排尿に関して気になる症状がある
- 頻尿/尿漏れに悩まされている
- おしっこが気持ちよくない
なぜ人間はオシッコに悩まされるのか?
排尿は毎日何度も行う、人間にとってはごく普通の行為です。
いや、排尿は生命に欠かせない重要な営みなのです。
だから人間だけではなく、動物はみんなオシッコをしています。
そんな、生きものに備わった当たり前の自然な行為なのに、なぜ人は排尿のことで悩むのでしょうか。
出にくいとか、何度もトイレに行きたいとか、漏れるとか、どうして人間だけにそのような不都合が起こってくるのでしょう。
たとえば前立腺肥大による頻尿は薬や簡単な手術によって比較的よく治る病気ですが、薬を飲んでも、あるいは手術が成功しても、「やっぱりオシッコが近くてねえ~」と訴える患者さんがいます。
治療して頻尿や排尿困難の原因がなくなったはずなのに、なぜかオシッコの悩みだけが残っているのです。
これは、いったいどういうことなのでしょうか。なんとも不思議ですね。
原因はオシッコの不自然な習慣にある?
私は旭川市に現在泌尿器科を開業して長くなりますが、毎日オシッコの悩みを抱えて受診する患者さんを診ていくなかで、この「不思議」の意味がだんだんわかってきました。
なぜ、疾患とは無関係にオシッコの悩みが起こってくるのか。
それは、その人が子どものころからずっと続けている「排尿の習慣やオシッコについての考え方」に左右されているのではないか、ということです。
物心つくころから「排尿の不自然な習慣」が身につき、それを何十年も「それが普通」と思って続けてきた人が、中高年になってオシッコのことに悩まされているのではないか。
前立腺肥大症などの疾患は排尿障害の引き金になっているけれども、おおもとの原因はその長年続けてきた排尿の習慣にあるのではないか。
これは医学的に大々的な調査を行って明らかにしたことではなく、あくまで旭川市の一開業医が患者さんを診てきたなかで経験的に「たぶんそうなんだろう」と考えていること、つまり仮説にすぎません。
しかし、そのオシッコに関する「不自然な習慣や考え方」を改善していくなかで、オシッコの悩みもすっかり解消できる患者さんがたくさんいます。
老いも若きも男性も女性も、みんな同じように、自然な排尿の習慣を身につけることによって薬をやめることができ、オシッコの悩みから解放されていきます。
オシッコのときに「いきんで」いませんか?
排尿の悩みを抱えている人には、オシッコの仕方に、ある共通点があるのです。
それは、オシッコのときに必ず「いきんで」排尿する、という習慣です。
実は、オシッコのときに「いきむ」ことほど良くないことはありません。
「え、先生はオシッコのとき、いきまないの?」
患者さんは、そんなふうに問い返します。
はい、私は排尿するときに「いきみ」ません。
私はただリラックスして、もらさないようにしていた心のカギを外し、全身の筋肉をゆるめ、大きな解放感とともに奔流させるだけです。
いきまないので、連れションで隣の人と会話もできますし、一人の場合には放尿中の爽快感とともに「ふ~っ」と溜め息をもらしながらすることもあります。
そして排尿中も排尿後も、とても気持ちいいものです。
排尿は一種の快感です。
オシッコのときにいきまないで自然にほとばしらせる習慣を幼いころから自然に身につけている人は、成長過程でも大人になってからも、オシッコに悩むことはありません。
そう断言しても過言ではないと、私は思っています。
みなさんは正しい習慣で気持ちのいいオシッコができていますか?
排尿の習慣は、その人にとって当たり前すぎるほど当たり前のことです。
たとえほかの人と違っていたとしても、「自分のオシッコの仕方」こそスタンダードと考えいます。
オシッコの仕方の違いについて同僚と議論することはないし、奥さま方の井戸端会議の議題にものぼりません。
このため患者さんたちは、自分の排尿の習慣が「修正すべきである」とは、生まれてから現在まで夢にも思ったことがないのです。
学校でも、親から教わることがないからです。
その一方で、そのオシッコの仕方が隠れた原因であることを知らずに、オシッコのことで悩んでいます。
オシッコに悩む人は、薬を飲む前にやるべきことがある、ということなのです。
おわりに
患者さんに聞くと、検査ではっきりと「いきんで」オシッコをしていることがわかっているのに、自分では「そんな、いきんでなんていませんけど……」と言います。
つまり、いきんでいるという意識さえなく、「オシッコをするとはこういうこと」と体にしみついているのです。
排尿の習慣は、そう簡単に変えられないかもしれません。
しかし、なかにはすんなりと自分のオシッコの仕方の習慣を改めて、オシッコの悩みと薬にサヨナラしていく患者さんもたくさんいます。
それができるのは、私の説明を聞いて「自分は知らずにいきんでオシッコをしているんだ、それが結果的にオシッコのトラブルにつながっているんだ」というイメージを持つことができた人です。
いきまないオシッコをすると、「こんなにもオシッコって気持ちがいいものなのか!」と驚かれるはずです。
北海道旭川市にある神楽岡泌尿器科は、「排尿のかかりつけ医」になることを目指し、患者本位で、気軽に緊張せずに受診していただける病院づくりを目指しています。
「オシッコのことで悩んでいる」「気持ちのいいオシッコについて知りたい」という方は、院長による無料メール相談も行っておりますので、まずはお気軽に疑問点や懸念内容をご相談ください。
病院まで来られない方々にも往診で対応可能です。患者さんご本人だけでは無くご家族の方々からのご相談にもお答えします。
【著作・メディア掲載など】
- 2014年 『「気持ちいいオシッコ」のすすめ』(現代書林)刊行
- 2016年 『現代の赤ひげ 医療最前線の名医9人』掲載
- 2016年 『週刊新潮』(10/27 号)掲載
- 2020年 『メディアあさひかわ』(4月号)掲載
- 2020年 『メディアあさひかわ』(5月号)掲載
- 2021年 『メディアあさひかわ』(5月号)掲載
【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など