これまでにご紹介してきた内容とも重複しますが、あらためてもう一度その重要性について述べてみます。なぜなら、このことは日常の生活全般に大きく影響を及ぼすからです。主にご家族の介護をされる方向けにご紹介しますので、参考にしてください。
排尿困難の改善
日常生活の活動性が不十分な時期は、尿失禁より、残尿が生じる排尿困難への対応を優先します。その理由として、以下のことがあげられます。
①残尿があると新たに尿をためるスペースが狭まり、膀胱はすぐ満杯となるため、何回も収縮して排尿します。このような酷使状態の膀胱は、萎縮傾向となる危険性があります。
②残尿は膀胱炎の原因となります。炎症が繰り返されると、膀胱の線維化が生じ、萎縮傾向となる危険性があります。
①、②が進行して萎縮傾向となった膀胱を低コンプライアンス膀胱と呼び、簡単な治療では治りません。
失禁ケアのポイント
ケアをしようとする時には、十分にコミュニケーションをとることから始めましょう。高齢者は、困っていても遠慮や自尊心から、相談や訴えをしない場合も多いものです。
①ケアをする側の態度や表情が大切です。明るく、穏やかな声かけで相談しやすい雰囲気をつくりましょう。
②ケアされる人の緊張の度合いなどを、表情などから判断しながら始めましょう。
③声をかける時には、声の大きさ、速さ、言葉づかいに注意しましょう(ただし、十分に関係がとれたら、その場の雰囲気に合わせ、あまり形にこだわらないように・・・)。また、誘導の際の声かけでは、まわりの人に気付かれないように配慮しましょう。
④認知症の方には、言葉で表現できなくても、行動パターンの中に排泄を示すサインがあります。焦らずに、じっくり行動を観察してサインを見つけるようにしましょう(サインとしては、部屋のすみや薄暗い場所に行ってモジモジするといった行動などがあります)。
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【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など