新しい生活で開放的になる春、肌の露出も増えて誘惑が多い夏、肌寒く人恋しくなる秋、
クリスマスなどイベントで気分が盛り上がる冬。
そんな時期に増えてくるのが、「性感染症=性病」です。
性病は男女問わず、大人なら誰にでも起こりうる話。今身体になんの異変を感じていなくても感染している可能性があるものなのです。
性病は、感染してから潜伏期間があり、時間が経過してから症状に気づく方も多い病気です。
今回は、感染者数が多い性病とともに、ある1人の患者様を例に性病発覚から治療までの流れを、院長渋谷の写真と共にわかりやすく紹介していきます。
もしかして…と思う方は、この記事内の勇気ある男性の行動をマネて専門医を受診しましょう。
» すぐに感染者が多い性病一覧「TOP5」をみるならコチラへ
秋を迎えた今。
ひと夏の出来事で、悩みを抱えることになった男性のストーリー。
「あぁぁ・・・入りづらい。恥ずかしい・・・。」
「・・・。やっぱ帰ろうかな。」
でも、それじゃ治らないしな。トイレの度、つらいし。なんか痒い気もするし・・・。
よし!
「し、失礼しまーす。」
(受付して、受診して、薬もらって・・・帰る!)
そして、
知ってる人に会いませんよーに!!
「それにしても、どうして僕が・・・。」
『Sさ~ん、診察室へどうぞ~』
きた!
「よ、よろしくお願いします。」
『今日はどうされましたか?』
「最近、おしっこをした時にちょっと痛いなと思って。あと、それが気になってから痒くなってきて・・・」
『他は何かありますか?』
「それで、おかしいな~?おかしいな~? 何か病気かな?って
3週間くらい前に女の子と遊んだのが原因かなって・・・!」
「性病もらったかな?って!!
心配になって、ネットで色々症状を調べてたんです・・・」
「ゴム、してなかったんで・・・・。」
(まじで?)
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『あー。う~ん・・・』
『性病の可能性があるから調べてみよう』
「やっぱり?! 僕、死ぬんですか??!!」
「いや、治るから落ち着いて・・・。」
『ひとまず尿の病原菌検査と血液検査をしようね』
『では、検査結果がでるまでに感染者数が多い順に性病についてお話しますね。』
それぞれ詳しく説明していきましょう。
1位 性器クラミジア
国内の感染総数は、28,381人。内男性 14,712人 女性 13.699人
20代で一番多く、次いで30代、10代と40代となる。
データ参照:厚生労働省
男女とも性的活動の活発な若年層に多いのが特徴。
下記症状にもあるが、自覚症状が乏しいため、実際の感染者はかなりいるものと推測されています。
男性の症状 | 女性の症状 |
・おしっこをした時の軽い痛み ・尿道からうみがでたり、かゆくなる | ・不正出血や性行時に痛みがある ・無症状で、妊娠や生理不順の検査に行って判明することがある ・不妊の原因や早産、流産の原因になることも ・自覚症状が乏しいため、感染に気付かず、無自覚のうちに男性 パートナーや出産児へ感染させることもある |
クラミジアについてもう少し詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめ
【検査方法】ほとんどPCR検査。尿や分泌物、おりものを調べる、場合によって血液検査
【治療】内服薬
『感染者数も多く、自覚症状もほとんどない。その分、感染している本人が気づかない内にうつしている可能性も高いですね。』
2位 淋菌感染症
国内の感染総数は、8,474人 内男性6,718人、女性1,756人
20代に一番多くみられ、次いで30代、40代、10代と続いている。
データ参照:厚生労働省
男性の症状 | 女性の症状 |
・おしっこをした時の激しい痛み ・尿道からやや黄色や白みがかった膿がでる ・精巣のあたりが腫れて熱がでる ・尿道や精管が細くなり不妊や排尿異常を起こすこともある | ・初期におりものや軽い下腹部の痛み程度で、ほとんど自覚症状はなし ・卵管の狭窄による不妊の原因になることも |
【検査方法】尿や分泌物、おりものを調べる、ほとんどPCR検査。痛い検査はありません。
【治療】内服薬
3位 性器ヘルペス感染症
国内の感染総数は、9,000人。内男性3,324人 女性5,676人。
20代に一番多く、30代、40代、50代と続く。
データ参照:厚生労働省
男性の症状 | 女性の症状 |
・性器にかゆみのある1ミリから2ミリほどの水疱ができ、破れると痛むを伴う ・進行すると、太ももやリンパ節に腫れや痛みがでる | ・大陰唇や小陰唇から、膣前庭部、会陰部にかけて水泡や潰瘍ができる ・進行すると、太もものリンパ節の腫れや痛みがあり、子宮頸管や膀胱まで感染が広がることもある |
【検査方法】
・水胞からの分泌物でウイルスの有無を調べる
・血液検査
【治療】
・抗ウイルス薬を飲む、塗る
・炎症を抑える薬や痛みどめなどを使う
4位 尖圭コンジローマ
国内の感染総数は、5,685人。内男性3,587人、女性2,098人
20代に一番多く、30代、40代、50代と続く。
データ参照:厚生労働省
男性の症状 | 女性の症状 |
・亀頭や陰のう、肛門のまわりに薄ピンク色のイボができる ・かゆみや軽い痛みを感じる程度の軽い自覚症状 | ・外陰部、膣、肛門のまわりに薄ピンク色のイボができる ・かゆみや軽い痛みを感じる程度の軽い自覚症状 |
男女共通の症状:男女ともにイボの数が増え、鶏のとさかのようになる |
【検査方法】特徴的なイボを確認する
【治療】薬を塗る、レーザーや電気メスによる焼灼切除
5位 梅毒
西暦1500年頃から世界中で大流行し、「死の病」と恐れられた性病。
1928年に発見されたペニシリンにより治る病気となり患者数は減少していましたが、年々増えてきている性病でもあります。
国内の感染総数は5,867人。内男性3,902人、女性1,965人
20代に一番多く、30代、40代、50代と続きます。
データ参照:厚生労働省
梅毒の症状
第1期~第4期まで段階によって症状が異なります。
第1期梅毒 | 感染後 1~13週間(平均3~4週間)の潜伏期間の後に、感染した部分(性器、口、肛門、手指など)の皮ふや粘膜に、痛みのないしこりができる。 また、しこりができた周辺のリンパ節が腫れるが、こちらも痛みはない。これらの症状は、放置しておくと2~3週間で自然に消える。 |
第2期梅毒 | 1期梅毒の症状の4~10週間ぐらい後、感染から3ヶ月程度で、血液やリンパの流れに乗って全身に移動し、身体全体に症状がでる。特に特徴的な症状に、バラ疹(ピンク色の円形のあざ)・丘疹(小豆からえんどう豆くらいの大きさの赤茶色の盛り上がったブツブツ)がある。 これらの症状は、放置しておくと3ヵ月から3年続き自然に消える。 |
潜伏梅毒 | 第2期梅毒の症状が治まると梅毒は体内に潜伏。この時期、基本的に症状はないが、たまに第2期梅毒の症状が再発することがある。 |
第3期梅毒 | 感染から3~10年ぐらいの時期に発症。ゴム腫というゴムのような腫瘍ができ、皮膚や骨から内蔵にまで体中に硬いコブができ、周囲の組織を破壊する。 |
第4期梅毒 | 感染から10~25年ぐらいの時期に発症。歩行不能、大動脈瘤などの症状があります。痴呆・重い脳障害など脳梅毒といわれる脳の障害も深刻で、ここまでくるとほとんど助かる見込みが無い。 |
梅毒についてもう少し知りたい人はこちらの記事がおすすめ
【検査方法】血液検査
【治療】抗生物質の投薬。投薬期間は症状によって異なります。
渋谷先生から
梅毒に感染し病変部分があると、HIV(エイズウイルス)などにも感染しやすくなるため、感染が判明したら、HIVの検査も受けることが望ましい。
『感染数が多いトップ5は以上ですが、もう一つ、気になる病気もありますよ。』
番外編 「HIV」
正式名称は「ヒト免疫不全ウイルス」。HIVに感染しただけではすぐに発症せず、5~10年でエイズを発症します。
2021年に報告された感染者数は、HIV742件、エイズ315件、HIVとエイズの新規報告者数を合わせて1,057件と発表されています。
データ参照:エイズ予防情報ネット
HIV初期症状 | 感染の機会から2~3週間で、初期症状がでるが、必ずしも全員に症状がでるわけではない。また初期症状は、風邪やインフルエンザと同じく、体内で急激にHIVウイルスが増えたことが原因となる症状のため、風邪など他の病気と区別がつきにくいです。 初期症状が出ず、自覚症状がない場合も多く、エイズを発症して初めて気づく人が30%程度といわれています。 HIV感染者などが悪性梅毒を発症すると、1年くらいで末期の梅毒症状があらわれることがあり、HIV感染者やHIV感染を疑われる人は梅毒には特に注意が必要。 |
エイズ | HIV感染後5~10数年を経てエイズを発症するが、近年5年以内でエイズを発症したという報告が増加していており、アメリカでは新規感染者の3人に1人が1年以内に発症しています。 近年では、治療により、エイズを発症してからでも免疫力が回復し、治療を続ければ普通に生活できるくらいまで回復する人のほうが多いです。命に関わるかどうかは免疫力低下により、発症した病気の種類次第です。 |
【検査方法】血液検査
【治療】
抗HIV薬 3~4剤の内服
※抗HIV薬を中途半端に内服してしまうと、薬が効かなくなってしまいます!!
決められた量を毎日服用し続けなくてはいけません。
その他
HIVは通常の性交で感染する可能性は限りなく低く、ハードなことをしない限りはうつらないことが多いと思われます。
私、渋谷は25年間で一度もHIV感染患者に会ったことがありません。
「・・・。もう絶対ひと夏の過ちは犯しません!」
性感染症は再発の恐れがあります。
感染が発覚したら必ずパートナーと一緒に治療しましょう!
『それでは、検査結果がでましたね。・・・えっと、』
「ど、どうなんですか?!」
「やっぱり・・・僕、死ぬんですか?」
『大丈夫ですよ。検査結果では異常がなく、感染症の心配もないようですね。』
「はぁ、よかった・・・。」
『今回のような、雑菌性の尿道炎は、男性の場合、水分摂取が少なかったり元々の排尿異常による尿流低下が原因の事が多いんです。
一日2000ml程度の適当な水分摂取と適当な一回300ml位の排尿で予防が可能なので、日頃から水分の摂取を心がけてくださいね。』
渋谷先生からのコメント
男性は尿道が長いため、基本的には女性に比べて尿道には感染を起こしにくくなっています。ですが、慢性的に感染したり、保菌者の状態になっていて自分で気付かずにパートナーに感染させる可能性があるので注意!
自覚症状(いたみ・かゆみ)が無くても、尿切れが悪かったり、間隔が短いということも立派な症状の一つ。
予防は大事ですが、きちんと治る病気なので、悩みがある時は早めに相談してくださいね。
また、後ろめたい気持ちがある人は不安と合わせて頻尿などの症状を感じやすい事があります。
不安を取り除くことと、隠れた感染をチェックするために早めに相談してください。
最後に、「性交渉は病気があったとしても心配を共有できる相手としよう。」
もし病気になっても納得できる覚悟の上で性交渉しましょう。
そうでなければちゃんとコンドームなどで予防しましょう。
【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など