50歳以上の男性に多い悩みは、ズバリ「おしっこの勢いが弱まった」です。
おしっこの勢いがなくなると、トイレをしている最中にポタポタとおしっこが垂れてしまい、ズボンについてしまうこともあります。
もしかしたらその現象に隠れた病気が潜んでいる可能性もあります。ただの年齢だからという解釈で終わらせないために、
今回は、北海道旭川市にある泌尿器科の院長渋谷が、おしっこの勢いなくなった原因、一般的なおしっこの勢いの基準・治療法の一部をご紹介します。
人には聞きづらい悩みでもあるので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
おしっこの勢いがなくなったと考えられる原因
おしっこの勢いがなくなる原因は、大きく分けて3つあります。
- 膀胱にたまっているおしっこの量が少ないため
- 膀胱がおしっこを出す動きをうまくできていないため(膀胱のポンプ機能が低下している)
- 膀胱から尿道の出口の間で、おしっこがスムーズに通れなくなっているため(尿路の通過障害がある)
具体的にどうしておしっこの勢いがなくなってしまうのか、ご紹介していきます。
原因①膀胱にたまっているおしっこの量が少ないため
おしっこは、膀胱に尿がたまって初めて出せます。
例えば、水がたっぷり入っているペットボトルは少し傾けただけで勢いよく流れ出ますが、底にたまっているだけの量だと、チョロチョロとしか流れ出ませんよね?
膀胱とおしっこも、ペットボトルと水と同じ関係で、膀胱に少ししか尿がないのにトイレに行くと、チョロチョロとしかおしっこが出ないんです。
- 心因性頻尿
- 過活動膀胱
- 膀胱炎
- 緊張
頻尿や尿がたまらず勝手に出てしまう過活動膀胱の方は、膀胱にたまっている尿量が少ないため、勢いも少なくなりやすいです。
また、膀胱に炎症が起こると、実は痛みが出るのではなく、強い尿意を感じるようになり、痛みを尿意と勘違いしてなんかにもトイレに行ってしまいます。
尿意とはうらはらにおしっこがたまっておらず、勢いが弱いと感じてしまうでしょう。
原因②膀胱がおしっこを出す動きをうまくできていないため
おしっこは、トイレで「おしっこをしよう!」と思った時、膀胱が縮むことで出せます。
「おしっこを出そう!」という脳からの指令がうまく伝わらないと、膀胱が縮まないため、おしっこが出にくくなってしまうのです。
神経の疾患を持っている方は、膀胱の動きがコントロールしにくくなるため、おしっこを出す動きがうまくできなくなります。
- 糖尿病などの内分泌疾患による末梢神経障害
- 腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの整形外科的疾患(膀胱の神経が損傷された場合)
- 脊柱管狭窄
- 子宮がんや直腸がんなど手術により膀胱の神経が傷つけられた場合
もし、おしっこに勢いがなくなってしまった方で、上記の既往歴があるなら、かかりつけ医にご相談するか、お近くの泌尿器科を受診してみてください。
原因③膀胱から尿道の出口の間で、おしっこがスムーズに通れなくなっているため
膀胱から尿道の出口の間をおしっこがスムーズに通れないと、おしっこの勢いがなくなってしまいます。
おしっこも川と同じで、膀胱から尿道の出口から出るまでの尿道で”何か”せき止められてしまったり、尿道が細くなってしまうと、おしっこの勢いが弱くなってしまいます。
- 大きく腫れた前立腺、前立腺癌
- 尿道狭窄
- 尿道腫瘍
- 尿道狭窄
前立腺は尿道を囲っているため、前立腺が腫れたり、がんができたりすると尿道が圧迫されておしっこが出にくくなり、勢いがなくなってしまいます。
「がんになったならすぐわかるんじゃない?」と思っても、実は前立腺がんは初期症状がほぼないため、検査をするまでわからなかったという方も多い病気です。
膀胱に尿がたまる前にトイレに行ってしまうわけでも、膀胱がおしっこを出す動きをうまくできていないわけでもない方は、1度受診をしてみましょう。
「おしっこに勢いがなくなった」と相談したい方は、泌尿器科の受診になります。
旭川にある神楽岡泌尿器科では、気軽に緊張せずに受診していただける病院づくりを心がけており、病院まで来られない方々にも往診で対応していきます。
患者さんご本人だけでは無くご家族の方々からのご相談にもお答えします。ぜひ気軽に疑問点や懸念内容をご相談下さい。
そもそもおしっこの勢いはどの程度が普通なのか
おしっこの勢いが弱いという感じ方は人によって違います。
感じ方にはどうしても個人差があるため、そこを評価するために当病院では「尿流量測定」で計測します。
尿流量測定とは、尿の勢いや排尿時間、排泄量を測定でき波形や数値で表されるもの。
数値を出すことで、自分のおしっこの勢いを客観的に捉えられ初めて勢いがないのか、あるのかわかるのです。
ちなみに当院で使用する「尿流量測定機器」はこちらです。
いたって普通のトイレ。検査方法は簡単で、ここでおしっこをするだけであなたの勢いが数値としてわかるのです。
年齢だからという理由で終わらせず、一度検査して自分のおしっこと向き合ってみるのもいいですね。
こんな症状があれば前立腺肥大症の可能性も
おしっこの勢いがなくなった方のほとんどが、前立腺肥大症が原因になっています。
前立腺肥大症は老化症状の一つで、50歳代の男性なら半数近くが前立腺肥大症に悩まされているくらい、一般的な病気のためです。
- おしっこに勢いがなくなった
- トイレが近い
- 夜にトイレに目が覚めることが多い
- トイレに間に合わないことが増えた
- おしっこの切れが悪い。
- トイレに行ったばっかりでも、おしっこが残った感じがする
前立腺肥大症とは、前立腺が腫れることで尿道が圧迫されて尿が出にくくなる病気です。ひどくなると、腎不全につながったりすることもあります。
悪化すると尿が出なくなってしまうこともあるため、「自分も前立腺肥大症かもしれない…」と思った方は、早めの受診をおすすめします。
先生教えて!もし前立腺肥大だったらどうしたらいい
神楽岡泌尿器科の院長渋谷は、1988年に札幌医科大学を卒業して以降、手術件数・診療実績を重ねてきました。
旭川で生まれ育ち、旭川で学んだ技術で、旭川の患者さんを多くみてきました。2014年から本も出版させていただきましたが、今も現役で活動しています。
一般的に知られていない「普通のおしっこ」についても、スペシャリストとして患者様1人1人に合った情報を提供させていただければと思います。
「前立腺肥大症になってしまった!」「受診はしていないけど前立腺肥大症に違いない」と思った方にも、今後どうするべきなのかを一緒に考えて行きましょう。
まとめ
高齢男性に多い「おしっこの勢いがなくなる」理由について、泌尿器科院長がご紹介しました。
少しトイレを我慢した後でも立ち便器の真ん中におしっこが飛ばなければ、あなたのおしっこの勢いは、弱まっている可能性があります。
- 膀胱にたまっているおしっこの量が少ないため
- 膀胱がおしっこを出す動きをうまくできていないため
- 膀胱から尿道の出口の間で、おしっこがスムーズに通れなくなっているため
「おしっこの勢いが弱いのは病気が原因かもしれない…!」と思った方は、早めの受診をお願いします。
監修:医療法人 神楽岡泌尿器科院長 渋谷のプロフィール
1961年(昭和36年) | 旭川生まれ |
1980年(昭和55年) | 道立旭川東高等学校 卒業 |
1988年(昭和63年) | 札幌医科大学 卒業 |
神楽岡泌尿器科では、「排尿に関してのかかりつけ医になりたい」という思いで日々診療に努めており、早期発見・早期治療ができるよう、患者本位で気軽に緊張せず受診していただける病院づくりに励んでいます。
当院を映像でもご覧いただけるため、雰囲気を知りたいという方はぜひご覧ください。
私は泌尿器科院長をしており、腸活によって得られる便秘解消作用と健康には深いつながりがあると考えています。
腸活と健康との関わりについての考えを『泌尿器科院長がなぜ「腸活」にこだわるのか?便と尿は健康に密接に関係している』でまとめているため、知りたい方はぜひご覧ください。
出版年数 | 著書・メディア掲載 |
2014年 5月15日 | |
2016年 5月10日 | |
2016年 10/27号 |
【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など