前立腺がんは、50代を超えた男性に後発するがんとして知られています。自覚症状がなく進行し、「気付いたときには全身に転移」といったケースも少なくありませんが、あえて自覚できないような排尿異常や血液異常が隠れていることもあります。
どちらせによ、早期発見につなげるためにも、定期的に検診を受けるようにしましょう。
前立腺がんとは?日本におけるがん患者の現状と実態について
男性の尿道を外側に取り囲むように位置している臓器、前立腺。精子をつくったり保護したりする重要な生殖機能を司っています。
「前立腺がん」とは、その前立腺にできるがん細胞で、前立腺の外側(周囲)できることが多く、排尿症状は現れにくいとされています。
逆に前立腺肥大症(これは良性のものです)では、前立腺の内部の腫れが強く、膀胱や尿道を圧迫しての排尿異常が現れやすいとされています。しかし、排尿状態は個人差があるので、その異常を自覚するのはたやすくありません。
しかし前立腺がんは、進行しても自覚症状がなく、排尿に関する障害に気付いたときには、すでにかなり症状が進んでしまっている場合が多くみられるため非常に厄介です。「気付いたときには、がんが他のところに転移している」といったケースが非常に高いことで知られています。
近年、日本でも前立腺がんが急増しています。
前立腺がんは男性の第1位にランクされますが、とても治療しやすいがんで、早期のものは5年生存率が98%を超えています。
転移があったり進行の早い方もいらっしゃいますが、がんによる死亡率は肺がんの2割程度ですので、ご安心して治療を受けてください。
日本の前立腺がんの死亡率は14.4%(平成16年厚生省調べ)で、最も死亡率の高い肺がんの71.3%と比べると低いものですが、前立腺がんの患者さんは年々増加傾向にあります。
「前立腺がん」と「前立腺肥大症」の違いとは?
よくある前立腺の病気として、「前立腺肥大症」が挙げられます。前立腺がんと症状がよく似ていて、頻尿や残尿感などの排尿障害となって現れる病気です。
しかし前立腺がんとは異なり、前立腺肥大症はいわゆる“良性腫瘍”ですので、がんになることもなければ、転移することもありません。適切な治療を受ければ改善します。
とはいえ、排尿障害の原因が前立腺がんなのか前立腺肥大症なのかを判断するには、検査を受けなければなりません。中にはがんができているのに特に自覚症状がない方もいらっしゃいます。
前立腺がんの原因は前立腺肥大症の原因と似ている点がいくつかあります。
まず、「加齢」が原因の一つであるということ。そして「男性ホルモンと女性ホルモンのバランス」が何かしら関係しているということ。
またその他にも、欧米の食生活(食肉文化)が広まりが一因になっているともいわれています。実際、肉をたくさん食べるアメリカでは前立腺がんの患者さんが非常に多いとの話もあるようです。
どちらにせよ、まずは50代になったら、必ず定期的に泌尿器科での検査をするようにして、早期発見につなげていきましょう。
どうやって前立腺がんを検査するの?
(引用画像:日本泌尿器学会)
「PSA」という血液検査ひとつで前立腺がんの心配の有無がわかります。PSAが高ければ、前立腺のごく一部を細い針で組織細胞を検査し、より詳細に状況を確認していきます。
万が一前立腺がんとしても、発見が早期なら根治的前立腺全摘除術という手術や放射線治療、進行している場合はホルモン療法などでコントロール可能です。
もしも排尿に関して違和感や不安なことがありましたら、お気軽にご相談ください。
ところで、渋谷院長先生はどんな人?
【著作・メディア掲載など】
- 2014年 『「気持ちいいオシッコ」のすすめ』(現代書林)刊行
- 2016年 『現代の赤ひげ 医療最前線の名医9人』掲載
- 2016年 『週刊新潮』(10/27 号)掲載
- 2020年 『メディアあさひかわ』(4月号)掲載
- 2020年 『メディアあさひかわ』(5月号)掲載
- 2021年 『メディアあさひかわ』(5月号)掲載
【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など