前立腺肥大症は加齢に伴い多くの男性が経験する疾患ですが、適切な生活習慣で予防や症状の悪化を防ぐことが可能です。
特に、適切な水分摂取は前立腺の健康維持に重要な役割を果たします。本記事では、泌尿器科の観点から、前立腺肥大症を予防するための水分摂取方法について解説します。
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など
前立腺肥大症を予防する正しい水分摂取方法
前立腺肥大症を予防するためには、正しい水分摂取が欠かせません。水分は体内の老廃物を排出し、腎臓や膀胱の機能を維持するために重要です。
ここでは、前立腺肥大症を予防するための正しい水分摂取方法をご紹介します。
1. 適切なタイミングで水分補給を行う
一度に大量の水分を摂取するのではなく、こまめに少量ずつ飲むことが大切です。
当院の患者さんへのアドバイスでは「1時間にコップ1杯分の水分を摂ること」をすすめております。
1時間ごとにまとめて飲む必要もありません。ゆっくり1時間かけて1杯飲んでいただければ十分ですよ。水分をマメに摂ることはとっても重要です。
生活習慣としてマメに水分をとることで、尿の濃縮による頻尿などを予防することが楽にできると思います。
2. 膀胱に負担をかけない前立腺肥大に良い飲み物を選ぶ
水分補給としては、カフェインを含まない飲み物を選びましょう。カフェインやアルコールは利尿作用が強く、膀胱を刺激してしまいます。
水やハーブティーなどの穏やかな飲み物が最適です。特に、カモミールティーやミントティーはリラックス効果もあり、膀胱への負担を軽減してくれます。冬であれば暖かいお茶がよろしいでしょう。
3. 水分を控えるタイミングを知る
夜間のトイレ回数を減らすためには、夕方から夜にかけての水分摂取を控えることが有効です。また、運動後や汗をかいたときには水分を多めに摂る必要がありますが、過剰摂取は逆効果です。1日を通してバランスよく摂取することが大切です。
正しい水分摂取量で実践する排尿改善トレーニング
前立腺肥大症には、気持ちいい排尿習慣、つまり「快感おしっこ」を身につけることが大切です。
快感おしっことは、いきまず自然に奔流させる気持ちのいいおしっこのことをいいます。
まずは、適当な水分補給でおしっこをしっかりと溜めましょう。目安としては、1日2リットルの水分摂取が理想です。
1日2ℓの水分摂取が飲み慣れていない方は、コップ一杯200mlを休憩の度にこまめに取り入れるといいでしょう。
水分摂取が大事な理由は、腎臓機能を助け、尿管→膀胱→尿道と続く尿路の健康を保つためです。
そして、尿意を感じたとき漏れたら困るから早くおしっこに行くのではなく、少し止めておこうという意識をもって、無理なく少し我慢してみましょう。
この時お腹にグッと力を入れて我慢するのではなく、肛門と尿道をきゅっと閉めて普通に深呼吸しているのが正しい体勢です。
たっぷりとおしっこを溜めることができたら、あとは「いきまない」で一気に排泄します。
いきまないリラックスしたおしっこをすることが気持ちいい排尿習慣への第一歩です。
前立腺肥大症になったらやってはいけないことは?
前立腺肥大症を発症した場合、症状の悪化を防ぐためには日常生活での注意が重要です。なかでも以下の行動は前立腺や膀胱にとっても悪影響のためできる限り控えるようにしましょう。
長時間の我慢
尿意を感じても我慢し続けることは、膀胱や前立腺に負担をかけるだけでなく、感染症やその他の排尿トラブルを引き起こすリスクがあります。上記でご紹介した排尿トレーニングを実践して無理のない我慢で自然にいきまない「快感おしっこ」を目指しましょう。
辛いものなどの刺激物の摂取
唐辛子やわさびなどの香辛料や、キムチ、スパイスカレーなどの辛い刺激物は、膀胱や前立腺を刺激し、前立腺肥大症の症状を悪化させる可能性があります。症状が悪化する場合は摂取を控えるようにしましょう。
便秘の放置
便秘は前立腺に圧力をかけ、排尿をさらに困難にする可能性があります。食物繊維を多く摂る食事や適度な運動を心がけ、便秘を予防しましょう。
まとめ
前立腺肥大症の予防には、適切な水分補給が重要です。水分摂取の基本は、少量ずつこまめに摂ること。そして、カフェインやアルコールを避け、水やハーブティーなどの体に優しい飲み物を選ぶことがポイントです。
また、日常生活で膀胱や前立腺に負担をかけないための排尿改善トレーニングなどの工夫を取り入れることで、症状の悪化を防ぐことができます。正しい水分摂取方法を実践し、前立腺肥大症を未然に防ぎましょう。
神楽岡泌尿器科では、院長直通無料メール相談も承っております。人には相談しづらいおしっこに関するお悩みなど、お気軽にご相談ください。
【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など