前立腺肥大症と診断されたものの、下腹部に痛みを感じて不安を感じていませんか?
実は、前立腺肥大症自体は痛みを引き起こしません。しかし、前立腺肥大症に伴って前立腺炎などを併発すると痛みが現れる場合があります。
この記事では、前立腺肥大症と前立腺炎の症状の違いや、痛みの場所別に考えられる原因、必要な検査、対処法などを解説していきます。
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など
前立腺肥大症の症状と前立腺炎の症状の違い
前立腺肥大症は、多くの男性が加齢とともに経験する状態であり、主な症状は尿の出が悪くなることや頻尿、排尿の遅延です。
しかし、前立腺肥大症自体が原因で、直接的な痛みを引き起こすことは少ないです。痛みを感じる場合、別の要因、特に前立腺炎の可能性が考えられます。
前立腺炎は、前立腺の炎症による状態で、急性と慢性の2種類があります。
急性前立腺炎は細菌感染によって引き起こされ、激しい痛みや発熱、寒気を伴います。
一方、慢性前立腺炎は長期にわたる不快感や鈍い痛みを特徴とし、時には原因が不明なこともあります。
前立腺肥大症が排尿のトラブルをもたらす一方で、つるような痛みや激しい痛みを感じる場合は、前立腺炎や他の泌尿器系の問題を疑うべきです。
場所別:前立腺肥大の痛みの原因
前立腺肥大症で痛みが出ることは通常ありません。他の原因として、「前立腺炎」を起こしている可能性があります。
ここでは痛みの場所別に原因と考えられるものを見ていきましょう。
排尿時に痛む、発熱がある
急性前立腺炎の可能性があります。特に最近になって痛み始めた人は可能性が高いです。
急性前立腺炎は、前立腺に細菌がつき、感染して炎症を起こしている状態。睡眠不足や疲労など免疫が低下している時に起こりやすいことが特徴です。
抗生物質(内服薬や点滴)で治ることが多いので、一度通院しましょう。早ければ早いほど辛い時間が少なく済みます。
陰嚢や精巣(睾丸)が痛い、下腹部や股の付け根が鈍く痛む、射精時に痛む
慢性前立腺炎の可能性があります。鈍い痛みがずっと続いている人はこの可能性が高いです。
慢性前立腺炎は、血液の流れが悪くなって起こると考えられている状態。パソコン仕事や運転など、長時間座ったままの人に多いことが特徴です。
薬で炎症と痛みを緩和させながら、生活習慣を見直して改善していきます。こちらは薬で治すというよりは、血行障害を治していくイメージです。
背中や腰回りが痛い
これは今すぐに受診してください。背中や腰回りの痛みは、腎臓が悲鳴を上げている可能性があります。
前立腺肥大症があって、オシッコが思うように出ないと腎臓にダメージが蓄積していきます。腎臓が腫れると、腎被膜という膜が引っ張られ、痛みが出てくる。
これを放置すると、尿路結石で激痛が走ったり、人工透析が必要になったりとあなたにとって良くないことばかりが起きます。
背中や腰回りが痛い人はすぐに泌尿器科を受診しましょう。「もう若くないからなのかな…」と放置していると大変なことになります。
疾患別:前立腺に痛みがあるときに必要となる検査
前立腺に痛みを感じる場合は、どんな原因によって痛みの症状が現れているのか、疾患別に必要となる検査は以下の通りです。
前立腺肥大症
前立腺肥大症の検査には主に、尿検査、血液検査、腹部エコー検査、尿流量(ウロフロメトリー)検査があります。
問診では、症状の内容や時期、既往症や服薬している薬の内容などをうかがい、薬物療法の有無や、重度の場合は手術療法の判断を行います。
前立腺炎
急性前立腺炎
尿に含まれる細菌・白血球の状態を検査し、必要に応じて血液検査を行います。
また、肛門からの直腸指診による検査を行うこともあります。
慢性前立腺炎
尿に含まれる細菌・白血球の状態を検査し、直腸診などを行います。
また、クラミジア感染症による炎症が疑われる場合には、クラミジア検査も行います。
前立腺がん
前立腺の痛みの原因が前立腺がんの可能性がある場合、直腸診、腹部エコー検査を行い、必要に応じてMRI検査、CT検査などを行います。
採血による血液検査で血清PSAの値が高くみられる場合には、組織を採取してがん細胞の有無を調べる前立腺生検を行うこともあります。
痛みを放置すると腎臓に負担がかかりやすい
急性前立腺炎は放置すると熱が上がったり、慢性前立腺炎になってしまうことがあります。
慢性前立腺炎を放置すると、歩くことや座ることも辛くなる、おしっこが更に出にくくなり腎臓に負担がかかるなど、悪いことばかりです。
最悪の場合腎不全になって、人工透析を一生しなければならないなど、負担が大きくなります。お金もかかります。
早め早めの段階で治療していくことが、あなたの健康な将来に繋がります。
痛みへの対処法:ひとまず痛み止めを飲んで、すぐ通院
痛みが出ている場合は、体が限界のサインを出しているということなので、まずは受診しましょう。無理に我慢することはありません。
風邪と同じで、早めの段階で対処できれば回復も速いです。逆に放置すると腎不全など取り返しのつかないことになりますので、忙しいかもしれませんが時間を見つけて受診してください。
前立腺炎かも?と思った時の注意点
排尿時の痛みや股間周りの鈍い痛みで「前立腺炎かも?」と思ったら、以下のことに気をつけましょう。
- 長時間座ったままにならない(1時間に1回歩く)
- アルコールを控える
- 下半身を冷やさない
- ストレスを溜め込まない
- 十分な水分を採り、気持ちいいオシッコを心がける
それぞれ前立腺炎を悪化させる可能性が高いものです。血流を悪くしないこと、免疫力を下げないことが大切。
まとめ
前立腺肥大症自体は痛みを引き起こしませんが、痛みがある場合は前立腺炎や他の合併症が疑われます。
痛みを放置すると腎臓や他の器官に影響を与える可能性があるため、早めの診断と治療が重要です。まずは鎮痛剤で対処しつつ、速やかに医師の診察を受けることをおすすめします。
神楽岡泌尿器科では、院長直通無料メール相談も承っております。人には相談しづらいおしっこに関するお悩みなど、お気軽にご相談ください。
【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など