前立腺肥大を小さくするには?手術の前にまずは排尿習慣の改善から

前立腺肥大を小さくするには?手術の前にまずは排尿習慣の改善から

前立腺肥大症と診断され、薬を飲んでいるけれど、なかなか症状がよくならないとお悩みの方も多くいらっしゃいます。

前立腺肥大症の治療には薬や手術がありますが、当院ではまず、ご自身で取り組める排尿習慣の改善から患者さんと一緒にサポートしながら進めていきます。

今回の記事では、前立腺が大きくなる原因から、前立腺肥大を小さくする排尿習慣の改善法、さらに前立腺肥大症の具体的な治療法まで詳しく解説します。

【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など

前立腺が大きくなる原因

前立腺肥大症が発症するメカニズムについて、全ては解明されていませんが、さまざまな要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。なかでも、前立腺が大きくなる主な原因として以下の2つが挙げられます。

年齢によるホルモンバランスの変化

加齢とともに、性ホルモンのバランスが変化し、前立腺を刺激するホルモン(ジヒドロテストステロン)が増加します。これにより、前立腺の細胞が増殖し、肥大を引き起こすとされています。

前立腺は50歳を過ぎるころから肥大することが多くなり、年齢とともに増加する傾向にあります。70歳以降では約7〜8割の人が前立腺肥大を認めると言われています。

射精頻度が多い

射精頻度が多い男性は、前立腺への刺激が増え、肥大を促進する可能性があります。

前立腺は精液を作り出す際に活動するため、その射精回数が多ければ多いほど肥大になりやすくなります。筋力トレーニングと同じです。

そのため、性生活が旺盛な人や、マスターベーションの回数が多い人は前立腺肥大になりやすいと考えられます。一方、射精頻度が少ないと癌化の可能性が高くなるとされています。

前立腺肥大症の原因については、以下の記事でも解説しています。

前立腺肥大を小さくするにはまずは排尿習慣の改善から

前立腺肥大症になると、オシッコが出にくいのが一番の悩みですよね。前立腺肥大の症状を和らげるには、まずは日々の排尿習慣を見直すことから始めましょう。

症状が重くない場合は、これでかなりオシッコがしやすくなる患者さんも多くいらっしゃいます。

ここでは、ご自身でも実践可能な3つの改善法をご紹介します。排尿習慣の改善のポイントは、無理に排泄せず、自然に出す気持ちのいいオシッコである「快感オシッコ」を目指すことです。

改善法1:少し我慢してからオシッコに行く

「オシッコしたい」と思ったらすぐに行くのではなく、少し溜めてからオシッコに行くようにしましょう。

具体的には、作業に集中できている間は我慢でOK、オシッコのことが頭から離れなくなったらトイレに行きましょう。

一回のオシッコで300mlくらい出るようになれば良いです。ときどき検尿のように大きめの紙コップで量を測ってみましょう。

改善法2:1時間にコップ1杯の水分を摂る

適度なオシッコをするために、1日に2リットル、1時間にコップ1杯(200ml)ずつ飲むことをおすすめします。

オシッコは出し過ぎても、溜め過ぎても体に良くない影響が出ます。ちょうど良い量と濃さのオシッコをするために、1時間にコップ1杯の水分を補給してみてください。

改善法3:オシッコの時、いきまない

オシッコをする時、本来であれば膀胱は自然に収縮して、オシッコは流れ出します。この時に力を入れてオシッコをしてしまうと、膀胱や尿道、尿道括約筋など排尿に関する臓器の血行障害が起こり、排尿トラブルに繋がります。

ただし、前立腺肥大症はオシッコが出にくくなっています。いきなり自然に出せるようにはならないので、少しずつ力を緩めていけるようトレーニングしていきましょう。

ここまでご紹介した「快感オシッコ」のコツは、以下の本でも解説しています。オシッコで悩んでいる人にぜひ読んで欲しい本です。

気持ちいいオシッコのすすめ』 

著者:渋谷秋彦

前立腺肥大を小さくする治療法の解説

上記でお伝えした排尿習慣の見直しを行いつつも、なかなか前立腺肥大が改善しない、オシッコが出にくくなる一方の場合は、薬や手術で対処していくことになります。

ここでは、前立腺肥大を小さくする治療法である「薬物療法」と「手術」についてそれぞれ解説します。

①薬物療法

薬物療法は、前立腺肥大症の初期段階や、症状が比較的軽い場合に選択されることが多い治療法です。主に以下の2種類の薬が使用されます。

  • α1遮断薬:前立腺や膀胱頸部の筋肉を緩め、尿の通りをよくする薬です。
  • 5α還元酵素阻害薬:男性ホルモンの働きを抑え、前立腺の肥大を抑制する薬です。

これらの薬は、症状の改善に効果がありますが、副作用としてめまいや立ちくらみ、性機能障害などが起こる可能性もあります。

その他、前立腺肥大症で処方される治療薬の一覧については以下の記事でも詳しく解説しています。

②手術

薬物療法で効果が不十分な場合や、尿が出にくい、尿が漏れる、頻尿などの症状が重い場合には、手術が検討されます。

現在は従来の手術に比べ、出血や患部へのダメージが軽減された治療法も増えており、前立腺肥大症の手術には、主に以下の3種類があります。

①「TURP(経尿道的前立腺切除術)

前立腺の組織を内側から削り取る手術です。血液が多く出る手術であるため体への負担はやや大きい手術になります。

②「HoLEP(ホルミウムレーザー前立腺蒸散術)」

HoLEPは前立腺組織を皮膜から剥がし、その組織を細かく細断して尿道から吸引する方法です。例えるならば、みかんの皮だけを残し実をレーザーを用いてくり抜くイメージ。患者さんの体への負担が少ないことが特徴で、近年取り入れている病院が増えてきた手術方法です。

③「WAVE(前立腺肥大水蒸気治療)」

WAVEは2022年9月に日本ではじめて保険適用になった新しい手術方法です。水蒸気を使い、前立腺の肥大した部分を壊死させ体に吸収させることで小さくする手術。出血が少ない、10分程度で手術が終わるなど、体への負担が少ないことが特徴です。

手術は、薬物療法よりも効果が高いとされていますが、入院が必要となる場合や、術後の合併症のリスクもあるため、慎重に検討する必要があります。

前立腺肥大症の治療法については、患者さんの状態や希望に合わせて、専門医と相談しながら選択するようにしましょう。

それぞれ前立腺肥大症の手術の詳細については、以下の記事でも詳しく説明しております。

前立腺肥大を放っておくとどうなる

前立腺肥大症を放置すると、様々な合併症を引き起こす可能性があります。例えば以下の通り。

合併症症状原因
尿路感染排尿時の痛み頻尿血尿など尿中や前立腺に細菌が繁殖する
膀胱結石排尿困難排尿時の痛み残尿感など尿中の成分が結石化してしまう
腎機能障害むくみ尿量の減少だるいなど尿を生成する時に腎臓に負担がかかる

特に腎臓にダメージが行くと、慢性腎臓病に繋がり、最悪の場合人工透析をすることになります。放っておくと良いことが無いので、オシッコが出にくいとか、痛みが出てきたなどがあればすぐに受診しましょう。

受診の判断がつかない場合はメールください。

院長直通メールを送ってみる

以下の記事では、前立腺に良い食べ物も紹介しているので、ぜひこちらも参考にしてください。

まとめ

前立腺肥大は、加齢とともに男性ホルモンが増加し、前立腺が大きくなることで引き起こされる疾患です。前立腺肥大の症状を和らげるには、日々の排尿習慣を見直すことが非常に重要です。

具体的には、①少し我慢してから排尿する、②こまめな水分補給を心掛ける、③排尿時にいきまないといった対策が有効です。

これらの排尿習慣の改善に加えて、症状の程度によっては、薬物療法や手術といった治療法も検討されます。気になる症状がある場合は、早めに泌尿器科を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。

また、今回の内容にまつわる情報は、YouTubeにて動画でも公開しています。神楽岡泌尿器科では、前立腺肥大症を始めとした泌尿器のトラブルについて、わかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。

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