前立腺肥大症と過活動膀胱の関係|違い・併発する仕組みを泌尿器科医が解説

「急に強い尿意が起こる」「昼も夜もトイレが近い」といった症状がある場合、過活動膀胱だけでなく、前立腺肥大症が関係している可能性があります。

前立腺肥大症と過活動膀胱は別の病気ですが、同時に起こることがほとんどです。前立腺肥大症によって尿が出にくい状態が続き、膀胱へ負担がかかることが、尿意切迫感や頻尿などの過活動膀胱症状を伴う一因と考えられています。

この記事では、前立腺肥大症と過活動膀胱の違い、併存する仕組み、必要な検査、治療の考え方を解説します。

【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」

札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など

前立腺肥大症と過活動膀胱は症状が重なる

前立腺肥大症は、肥大した前立腺が尿道を圧迫し、尿を出しにくくする病気です。尿の勢いが弱い、尿が出るまで時間がかかる、排尿後もすっきりしないといった症状が代表的です。

過活動膀胱とは、急に強い尿意が起こり、我慢することが難しい「尿意切迫感」を主な症状とする症状症候群です。診断にあたっては、尿路感染症やほかの原因となる病気がないことを確認します。 

通常は頻尿や夜間頻尿を伴い、トイレまで間に合わず尿が漏れる切迫性尿失禁を伴う場合もあります。

両者は別の病態ですが、頻尿や夜間頻尿など共通する症状があります。また、前立腺肥大症と過活動膀胱が併存する場合もあるため、症状だけでどちらか一方に決めることはできません。

前立腺肥大症が過活動膀胱症状を引き起こす仕組み

前立腺が肥大して尿道への圧迫が強くなると、膀胱は抵抗に逆らって尿を押し出そうとします。この状態が続くと膀胱へ負担がかかり、尿が十分にたまる前に強い尿意を感じたり、膀胱が過敏に反応したりすることがあります。このような変化は、過活動膀胱症状を伴う一因と考えられています。

また、排尿後も膀胱内に尿が残ると、次にためられる尿の量が少なくなります。その結果、短い間隔でトイレへ行くようになる場合があります。

前立腺肥大症と残尿の関係は、前立腺肥大症と残尿の関係!メカニズムと対策で詳しく解説しています。

前立腺肥大症と過活動膀胱の症状の違い

症状は「尿を出すときの症状」と「尿をためるときの症状」に分けると整理しやすくなります。

前立腺肥大症で起こりやすい排尿症状

  • 尿の勢いが弱い
  • 尿が出始めるまで時間がかかる
  • 排尿の途中で尿が途切れる
  • お腹に力を入れないと尿が出にくい
  • 排尿後も尿が残っているように感じる

過活動膀胱で中心となる蓄尿症状

  • 急に我慢しにくい強い尿意が起こる
  • 昼間の排尿回数が多い
  • 夜間に排尿のため起きる
  • 尿意を感じてからトイレまで間に合わず漏れる

排尿回数が1日8回以上であっても、それだけで過活動膀胱とは診断できません。排尿回数には個人差があり、多尿、尿路感染、糖尿病、服用中の薬、前立腺肥大症による残尿など、別の原因でも頻尿は起こります。

前立腺肥大症と過活動膀胱の関与を調べる検査

泌尿器科では、症状の聞き取りだけでなく、尿の出方や残尿を確認し、前立腺肥大症、過活動膀胱、両者の併存を検討します。

問診と質問票

尿の勢い、排尿回数、夜間頻尿、尿意切迫感、尿漏れ、残尿感などを確認します。前立腺肥大症ではIPSS、過活動膀胱ではOABSSなどの質問票を使う場合があります。

尿検査

血尿や尿路感染の有無を調べます。膀胱炎や前立腺炎でも頻尿や尿意切迫感が起こるため、別の病気を除外するために重要です。

尿流測定と残尿測定

尿流測定では尿の勢いや排尿時間を、残尿測定では排尿後に膀胱内へ残っている尿の量を確認します。前立腺肥大症による尿路閉塞が疑われる場合、治療法を選ぶ重要な判断材料になります。

排尿日誌

排尿した時刻と量、水分を取った時間と量などを数日間記録します。排尿回数だけでなく、1回の尿量や夜間の尿量を確認できるため、多尿や夜間多尿との区別に役立ちます。

両方ある場合は排尿状態を確認して治療する

前立腺肥大症と過活動膀胱が併存している場合、前立腺による尿路閉塞の程度や残尿量を確認してから治療を選びます。

前立腺肥大症による尿の出にくさへ対応する

尿道周辺の筋肉を緩めるα1遮断薬やPDE5阻害薬、前立腺を縮小させる5α還元酵素阻害薬などを、前立腺の大きさや症状に応じて使います。

薬の種類と特徴は、前立腺肥大症の薬一覧をご覧ください。

過活動膀胱症状にも対応する

尿意切迫感や頻尿が続く場合は、膀胱の過剰な収縮を抑える抗コリン薬や、膀胱に尿をためやすくするβ3作動薬などを検討します。

残尿が多い方や尿路閉塞が強い方では、薬の選択に注意が必要です。自己判断で市販薬を使ったり、処方薬の量を変えたりせず、排尿状態を確認しながら治療を進めます。

男性の過活動膀胱については、男子の過活動膀胱の症状・原因・治療も参考にしてください。

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水分を取っていないのに頻尿になる理由を泌尿器科医が4つ紹介

薬で改善しない場合は手術を検討する

前立腺肥大症による尿路閉塞が強く、薬で十分に改善しない場合や、尿閉・血尿・尿路感染・膀胱結石・腎機能障害などがある場合は手術を検討します。

前立腺による圧迫を手術で軽減すると、尿の出にくさだけでなく、頻尿や尿意切迫感などが改善する場合があります。ただし、膀胱機能の低下状態、その負担の程度によっては、手術後も過活動膀胱症状が続くことがあります。

神楽岡泌尿器科では日帰りHoLEPに対応しており、1000例以上のHoLEP手術を行っています。すべての方が対象になるわけではないため、検査結果や全身状態を確認して適応を判断します。

詳しくは、前立腺肥大症「HoLEPの日帰り手術」について手術件数・診療実績をご確認ください。

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前立腺肥大症日帰り手術「HoLEP」について【専門医が解説】

泌尿器科へ相談したい症状

次のような症状がある場合は泌尿器科へ相談してください。特に、尿がまったく出ない、血尿、発熱・痛み、急な症状悪化がある場合は、直ちに医療機関へ連絡・受診が必要です。

  • 尿意はあるのに尿が出ない
  • 血尿が出た
  • 発熱や排尿時の痛みがある
  • 急に排尿症状が悪化した
  • 尿漏れや頻尿で日常生活・睡眠に支障がある
  • 薬を使っても症状が改善しない

症状が重なり、前立腺肥大症と過活動膀胱のどちらが原因か分からない場合は、院長直通の無料メール相談をご利用ください。

院長直通無料メール相談

まとめ

前立腺肥大症は尿を出しにくくする病気、過活動膀胱は尿意切迫感を中心とする症状症候群です。別の病気ですが、前立腺肥大症による尿路閉塞が膀胱へ負担をかけ、過活動膀胱症状を伴う場合があります。

治療では、症状だけで判断せず、尿検査、尿流測定、残尿測定などで排尿状態を確認することが大切です。頻尿や尿意切迫感、尿の出にくさが続く場合は、自己判断せず泌尿器科へ相談しましょう。