前立腺肥大症の手術の一つに、HoLEP(ホーレップ)というものがあります。
前立腺を丸ごと取る手術で、通常1〜2週間の入院が必要ですが、当院では日帰り手術が可能です。
今回は、旭川市で唯一日帰りHoLEPが可能な神楽岡泌尿器科の院長、渋谷秋彦先生に取材のもと、日帰りHoLEPについて紹介させていただきます。
前立腺肥大でお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
HoLEP(ホーレップ)の手術とは?
HoLEP(経尿道的ホルミウムレーザー前立腺核出術)とは、前立腺を丸ごと取り、細かく砕いて吸い出す方法です。イメージとしては、ミカンの皮だけ残して中身を取るイメージ。
この手術の特徴としては、出血が少なく、手術日数が従来の手術よりも短い。工夫をすれば日帰り手術も可能で患者さんにとって負担が少ない手術です。
全国での手術例も多く、安全性の高い手術で、主に前立腺肥大症で悩む患者さんへの手術として行われます。健康保険が適用される手術のため、経済的な負担も少なくできる点も重要です。
渋谷先生のHoLEP手術の経歴
かれこれ25年ほど前の話。
当時、勤務していた病院では、前立腺肥大症の手術で代表的な、TURP(経尿道的前立腺切除術)を行っていました。しかし、HoLEPの方が患者さんにとって身体的な負担が少ないとわかり、そこからHoLEPの手術を積極的にするようになりました。
当院を開業するとき、日帰りHoLEP手術をメインに行っていきたいと考え、病院の設計も日帰り手術ができる環境にこだわり建築し、今の神楽岡泌尿器科があります。
前立腺肥大症の手術だけでいえば、累計2000例以上の実績があります。
前立腺肥大症の手術|TURPとHoLEPの違い
TURP(経尿道的前立腺切除術)とは、内視鏡を尿道から入れ、電気メスにより前立腺を少しずつ削り取る手術のため、出血が起きやすいことが特徴。体への負担が比較的大きいことから、術後の入院が必須で経済面への負担も大きくなってしまう手術です。
それに対し、HoLEPは前立腺の外側のみにレーザーを当て、全体をくり抜くため出血や合併症のリスクが比較的低い手術になります。
そのため、患者さんの状況によっては日帰り手術が可能で負担が少ないことから当院で採用しています。
HoLEP日帰り手術のメリット・デメリットについて
HoLEP日帰り手術のメリット
一番のメリットは、患者さんのストレスを少なくできることです。
前立腺肥大症の手術は、入院期間を設けて行われている病院が大半です。入院となると、眠くないのに消灯時間に寝なければいけない、隣の人のいびきがうるさくて寝れないストレスなど集団生活で感じるストレスは大きくなるでしょう。
日帰り手術ができることで、自分の生活リズムを保ったまま、生活面でのストレスを少なく術後を過ごしていただけるのは、心理的にかなり楽になります。
また、「1週間入院です」と「日帰り手術も可能です」では患者さんが受け取る重みも異なるため、そういった面でも心理的な負担が少ない手術になります。
もちろん、簡単な手術ではないので、術後のリスク管理も徹底的に配慮していますよ。
あとは、経済的にも日帰り手術の方がメリットは大きいです。
通常入院となると滞在期間の手術以外の費用も発生しますが、日帰りは手術にかかる費用だけが発生します。なので、患者様の経済的にもメリットが大きいことが特徴です。
HoLEP日帰り手術のデメリット
HoLEP日帰り手術のデメリットは、患者様がある程度自己管理しないといけないことです。医療の専門的な知識が少ない分、発熱や痛みが出てきた場合強い不安を感じる方も多くいらっしゃいます。
神楽岡泌尿器科では、患者様の不安を少しでも軽減、身体的なトラブルを回避するために、日帰り手術を受けられた場合、24時間の電話サポートを行っています。
術後にカテーテルが抜けてしまった、痛みがかなり強いなどトラブルがあった場合は、神楽岡泌尿器科の番号までお電話ください。院長の判断により、適切な指示及び必要があれば患者さんの家に訪問し診療を行います。
Holep日帰り手術の1日の流れ
【手術前日】
特に制限はありません。
【手術当日】
起床後は飲食禁止
8:00:来院〜本日の状態を問診
8:30:麻酔開始(1時間〜1時間半の手術)
9:30:手術終了、夕方まで経過観察、昼食は無し
16:00:問題無ければ退院、カテーテルがついているため入浴禁止
【手術の翌日】
午前中に来院しカテーテル抜去、この日から入浴が可能になります。
日帰り手術を受けた後の通院について
基本は手術した日を0日と考えて、以下の日付で通院していただいています。
- 1日目(翌日):カテーテル抜去
- 3日目:発熱や排尿時の異常が無いかの確認
- 7日目:経過観察
- その後2週間ごとに2ヶ月程度
実は手術後に現れる症状は、1日目よりも3日目以降に現れることが多いのです。そのため、手術直後はなるべく通院していただけるようにしています。
また、切除した部分の粘膜が再生するまで、3ヶ月程度かかります。そのため、2週間に1回程度通院していただき、経過観察をします。
HoLEPの日帰り手術がおすすめな方
- 入院へのストレスが強い方
- すぐに仕事に戻る必要がある方
- 経済的に余裕がない人
- 排尿障害が強く、薬や習慣改善で効果が見られない方
- 前立腺肥大の根本的な治療を望まれる方
- 前立腺肥大症のかかりつけ医を変えたい方
HoLEP日帰り手術ができるエリア
原則、旭川市まで約1時間で来られる方を対象としています。具体的には士別市、上川町、砂川市、富良野市など。
先ほどお伝えした通り、HoLEP日帰り手術にはリスクがあるため、何か起きた時にすぐに対処できるよう1時間以内と決めております。
日帰り手術が適応になる方
日帰り手術は、以下のような条件の人に実施しています。
- 患者さんが健康であること
- 手術や症状、治療に十分な理解度がある人
- (できれば)帰宅後に家族の協力が得られる人
反対に、事前に申告をお願いしたい人は以下の通りです
- 別の疾患により行動制限がある人
- 麻酔のリスクが高い人
- 心疾患がある人
- 術後早期の尿失禁を気にする人
事前の問診の際に日帰りができるかについてお話させていただきますので、お気軽にご相談ください。
神楽岡泌尿器科の手術室
写真左:手術室、ここでHoLEPの手術を行う 写真右:ホルミウムヤグレーザー
当院の手術室の様子もご覧になれます。
HoLEPの手術には「ホルミウムヤグレーザー」という専用の機械を使用します。水に吸収されやすく、前立腺や尿路結石に対処が可能な最新の医療機器です。
レーザーも比較的浅い所にしか当たらないため、体組織へのダメージが少なくすむ機械でもあります。手術自体は全身麻酔で行うため、患者さんは寝て起きたら手術が終了している状態です。
↑手術前後で使う病室
手術室の隣には、個室の病室も準備しています。手術後はここで経過観察をしつつ、患者様にゆっくり休んでいただいています。
院長渋谷がHoLEP日帰り手術にかける想い
当院は開院の際、「患者様が気持ちいいおしっこができること」をコンセプトに掲げました。
排尿の障害はさまざまな原因がありますが、その中でも前立腺肥大症は、以前スムーズに行えていた排尿が困難になり、身体と心に大きなストレスを与える疾患です。
こうした患者様をみてきて、身体の負担を軽減し、薬の使用を不要にし、気持ちの良いおしっこができる状態に導きたいという想いから、ストレスの少ない日帰りHoLEPの手術を積極的にするようになりました。
今まで1500例以上の手術をしていますが、まだまだ困っている患者様は全国にたくさんいます。この技術が全国に広まることを願い、共通意識の医師と毎月勉強会を行い、知識や技術向上のための情報を交換、最新治療を共有し現場に活かしています。
医療技術もどんどん進化する時代。
常に一つの技術や知識にとらわれず、患者様の負担が少ない治療方法を見極め、選択できるよう私も進化し続けたいのです。
でも、安心して欲しいのは、全ての患者様に手術を適用しているわけではないということ。薬での治療が有効な場合もあれば、排尿習慣の見直しが必要な場合もあります。
まずは、患者様と十分に相談し、適切な治療方針を選択できるよう診療しています。
・前立腺肥大症で通院されている方
・もっと根本的な解決をしたい方
・手術に興味ある方
・転院等のご相談
前立腺肥大に関してお困りごとがあれば、院長直通の無料メール相談も可能です。
お気軽にご利用ください。
【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など