神楽岡泌尿器科 渋谷秋彦 院長 著
腸内細菌、腸内フローラ、善玉菌悪玉菌など、最近腸内環境の情報が多く出ています。
テレビ番組や雑誌の記事などど多く取り上げられています。実は医療界でもこの腸内環境の研究は進んできていて、今まで注目されていなかった多くの作用や有効性がわかってきています。
なぜ泌尿器科医が腸のこと? と思われると思いますが、便秘などの排便困難が排尿にも強く関わることが多くあるのです。当クリニックのスローガンに掲げている『気持ちいいおしっこをしてください』は、排便にも関連します。
リラックスしての排尿排便が、腸にも良い!
排尿排便はできればしたくないもので、自分の行動(仕事や遊び、睡眠など)を妨げて仕方なく行うものです。ですから、排尿排便にはもともと快感を伴うといったご褒美があるのです。大便も気持ちよくできるのが理想的なのです。
排便は、いきんでするものと考えている方は多いと思います。『ウンチは踏ん張ってするもの』という方は、多くいらっしゃいます。
僕は排尿に際していきみは必要なく、リラックスして声を出しながらできるものとお話ししているのですが、これは大便にも当てはまります。
最近は、いきみをかけた排便が心血管系のトラブルを誘発すると考えられていて、循環器科や脳外科の先生方が便秘に対してのアプローチをされることも多くみられます。
便が直腸におりてきたり、膀胱が十分に充満すると自律神経によって自然に直腸膀胱は収縮して、肛門や尿道括約筋が弛緩して(ゆるんで)息を吐きながらリラックスして排尿排便が完了します。
このとき、快感を伴うわけです。気持ちいい排尿排便は共通する自律神経による自然活動なんです。
体と心に大きな影響がある 腸の8つの働き
ご存知の通り、腸の働きには消化吸収という大きな働きがありますが、ほかにも多くの作用を有しています。
①消化 胃で3割、小腸で7割消化
②吸収 綺麗な環境の腸で吸収された栄養素が身体を作る
③合成 栄養素は腸内で合成されて吸収できるかたちになる
④代謝 腸の活動で代謝が促進、機能が落ちるとむくみや血行障害の原因。腸の動きが弱くなると内臓脂肪も増えます
⑤解毒 腸内で添加物のような有害物質や細菌ウイルスといった外敵を無毒化する
⑥造血 腸で吸収されたタンパク質が血液の資質をきめる
⑦排泄 老廃物や毒素を体外に排出する
⑧免疫 免疫細胞の7割が腸に集中、外敵や体内老廃物を駆除排除する
これら8つの腸の働きは、腸内が善玉菌優位の状態ではよく機能するのですが、悪玉菌が優勢な場合は、これらの機能が低下し、さらに悪玉菌の産生する毒素が身体中を巡ることで、様々な病気の原因となってしまいます。
病気の予防、健康維持の観点から、良い腸内 環境を作ることが大切なのです。
また、腸の不調は身体全体の不調に繋がります。腸は第二の脳とも言われていて、脳の指令に寄らずに自らの判断で働く自律神経に強く関わります。
腸と脳の重さが同じなんてデータもあります。
腸の不調は自律神経の失調と合わせて、精神疾患の要因にもなり得るとされています。
腸内環境改善で免疫力もアップ ~健康の鍵になる、腸内細菌群=腸内フローラ~
腸内環境を良くするにはということですが、腸内には500種、100兆もの細菌群が存在します。
まるでお花畑のようであると、腸内フローラという表現をされるわけです。
この中には、半分が善玉菌と悪玉菌(合わせて50 %)、半分がどっちつかずの日和見菌です。
善玉菌が優位(30%対20%のような)の時には日和見菌は善玉として、反対に悪玉菌が優位(15%対35%のような)の時は悪玉菌に加勢するのです。
善玉菌の割合を多くすることが健康な腸内環境を作るコツとなります。 腸内環境を良くするには、十分な水分補給、食物繊維や発酵食品などの善玉菌のエサを多く摂ること、自律神経の不調を起こさぬように規則正しいストレスのかからない生活を送ることなどなど。楽しく元気に暮らすこと、なかなか難しいですが、これがやはり1番の対策です。
今は新型コロナウイルスの感染蔓延によるストレスの多い毎日となっていますが、腸内環境を良くすることで免疫力も向上させ、感染対策を強化してください。
なかなか大変な腸活ですが、より効率的な対策サプリもあります。次回その辺をお話ししましょう。
【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など