前立腺肥大症では、尿が出にくい・全く出ないといった症状が起こります。日常生活で排尿が思うようにできないのはストレスですよね。
解決方法の一つに、尿道ステント留置術という手術があります。手術と聞くと大がかりなイメージがありますが、尿道ステント留置術は身体への負担が少なく、日帰りでできる手術です。
一時的な排尿トラブルを解消するには効果的な手術ですので、選択肢を増やすためにもまずは知識を身につけていきましょう。
前立腺肥大症の尿道ステント留置術とは?
尿道ステント留置術は、前立腺肥大により潰された尿道に、ステントを入れて広げる手術です。わかりやすく言い換えると、交通渋滞を解消するための手術です。
尿道に直径7〜8mmの筒型ステントを入れ、排尿障害を解消します。症状は改善されますが、前立腺の切除は行われないため、根本的な治療にはなりません。
尿道カテーテルなどに比べ日常生活しやすく、生活の質を下げないことが大きな特徴です。薬物療法を行っても、前立腺肥大が小さくならない場合の選択肢の一つになります。
対象となる人
- 麻酔がかけられない方
- 大きい手術が体力的に難しい方
- 認知症がある方
- 尿閉がある方
特に、尿閉(自分で尿を出せない状態)がある方は、腎臓疾患に繋がるおそれがあります。日常生活に大きな影響が出ている場合は、一度通院し専門医にご相談ください。
他の前立腺肥大症の手術との違い
ここでは、ステント留置術と一般的な手術(HoLEP、TURPなど)との違いを見ていきましょう。大きな違いは以下の通りです。
- 身体への負担の違い
- 効果が出るまでの期間の違い
- 術後の生活の違い
- 根本的な治療になるかどうかの違い
これらの違いが生じるのは、手術そのものの方法が異なるためです。
手術方式 | 方法 |
---|---|
ステント留置術 | 尿道にステントを入れて、尿の通りを良くする |
HoLEP | 前立腺を内側から切除する(ミカンの実をとるイメージ) |
TURP | 前立腺を内側から削り取る(ミカンの実を切るイメージ) |
身体への負担の違い
ステント留置術は、部分麻酔で行うため身体への負担が少ないことが特徴です。部分麻酔で行うため、麻酔によるリスクも少なく、ステントが合わない場合は抜くこともできます。
HoLEPなどの手術は、全身麻酔で行うことが多いです。全身麻酔は体への負担も大きく、患者さまの体力や基礎疾患がある場合など行えないケースも多々あります。
効果が出るまでの期間の違い
ステント留置術の効果は、術後すぐにでます。術後問題がなければ、帰宅後はそのまま通常通りの排尿が可能です。
HoLEPなどの一般的な前立腺肥大の手術は、効果が出るまでに1週間〜2ヶ月程度かかることがあります。これは、前立腺の中を焼いて、収縮し正常な機能を取り戻すために時間がかかるためです。
この状態になると、ずっと尿道カテーテルを入れなければならず、一時的に生活の質が低下します。
術後の生活の違い
ステント留置術の術後は、普段通りの生活を送れます。定期的に通院をし、尿道に問題がないかを確認しつつ、一年経った頃にステントを交換・撤去を検討することになります。
HoLEPなどの術後は尿道カテーテルを入れ、一時的に入院になることが多いです。また、退院後も定期的に通院し、問題がないかを確認します。身体が排尿可能な状態に戻り次第、カテーテルを抜去し、通常の生活を送れるようになります。
神楽岡泌尿器科では、日帰りHoLEPの手術も実施しております。詳しくは以下のページで紹介していますので、前立腺肥大でお悩みの方は一度ご覧ください。
根本的な治療になるかどうかの違い
ステント留置術は、症状に対する手術です。尿が出にくい・全く出ないといった症状は改善されますが、前立腺そのものは切らないため根本的な治療ではありません。
HoLEPなどは前立腺そのものを切り取る、一部を削り取るなどの手術を行うため、根本的な治療です。ただし、精液を作る機能が低下するなどのデメリットもあります。
神楽岡泌尿器科の日帰り尿道ステント留置術の流れと術後
神楽岡泌尿器科は、前立腺肥大症の手術主にHoLEPや尿道ステント留置術が日帰りでできることが特徴です。
当院の日帰り尿道ステント留置術について紹介します。
日帰り尿道ステント留置術の流れ
手術自体は10分ほどで終わります。そのため、以下のようなシンプルな流れです。
- 問診
- 手術
- 経過観察(痛みの有無、尿が出るかどうかなど)
- 問題なければ帰宅
全体でおおよそ3〜4時間、お昼に手術し、夕方に帰宅するようなイメージです。
日帰り尿道ステント留置術の術後
術後は、定期的に通院していただきます。まず、手術した次の日に来てもらい、問題なければ1週間後など身体の状態に合わせて経過観察していきます。最終的には1〜2ヶ月のスパンでの通院となることが多いです。
問題なく安定していれば、一年経過したくらいのタイミングでステントを交換します。問題がある場合でも、すぐにステントを抜くのでご安心ください。
一般的には、尿道ステントを入れて一年後、膀胱の機能が回復したタイミングでHoLEPの手術を行う方が多いです。
HoLEPの手術については以下のページで解説しておりますので、あわせてご覧ください。
まとめ
尿道ステント留置術は、尿道に管(ステント)を入れ広げることで、排尿トラブルを解決する手術です。
日帰りで手術可能かつ、術後も通常通りの生活を送れるため、生活の質を下げないことが大きな特徴です。また、身体への負担も少ないことから、全身麻酔が難しい方でも手術可能です。
今回の内容は、YouTubeでも公開しています。神楽岡泌尿器科では、前立腺肥大症を始めとした泌尿器のトラブルについて、動画でもわかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。
今回の渋谷院長の解説動画はこちらから
【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など