腸活を調べているうちに「プロバイオティクス」という言葉を聞いたことがあるのではないしょうか?
プロバイオティクスとは何か?
どんな効果があるのか?
腸活との関係性は?
どんなものに含まれているのか? などなど…、
プロバイオティクスの気になる正体を、医師の渋谷がわかりやすくご紹介します!
腸活とは切っても切れない関係にあるプロバイオティクスをしっかり理解すると、腸活の意味や方法の理由などがわかるようになるでしょう。
プロバイオティクスの概要
プロバイオティクスとは、生きたまま体内に送り届けることで善玉菌優位の腸内環境を作ってくれる微生物のことです。
腸内環境を善玉菌優位にすることで、プロバイオティクスはヒトの健康に有益な作用をもたらしてくれます。
主に、乳酸菌やビフィズス菌などが含まれるヨーグルトや乳酸菌飲料がプロバイオティクスに当たります。
ここで、実は知りたいのは【プロ】バイオティクスではなく、【プレ】バイオティクスだった!という方は、『腸活はプレバイオティクスの支えが必要!プロバイオティクスの違いも紹介』をご覧ください。
プロバイオティクス効果
プロバイオティクスは、良い働きをする微生物全般のことを指すため、かなり多くの種類の菌株が当てはまります。
しかし、プロバイオティクスの要件は厳しく、安全で、科学的な根拠があり、制菌数の維持など品質が保たれるものに限られています。
そのため、プロバイオティクスとして発表されている食品の種類は乳酸菌飲料やヨーグルトが中心です。
プロバイオティクスとその特徴的な保健作用
プロバイオティクスの大まかな保険作用・特徴の種類 | プロバイオティクスによってもたらされる作用・予防の一例 |
感染症予防 | ロタウイルス下痢症予防・乳児への感染症予防・免疫調節作用 |
アレルギー軽減・抑制作用 | アトピー性皮膚炎予防 |
整腸作用 | 下痢症予防 |
腸内環境の改善 | 善玉菌優位な腸内環境 |
慢性的な大腸疾病に対する作用・予防 | 慢性炎症性腸疾患・過敏性腸症候群の症状緩和・潰瘍性大腸炎の寛解維持 |
プロバイオティクスの特徴は、表にまとめた通り、主に感染症の予防・免疫作用・整腸作用・慢性的な大腸疾病に作用すると認知されています。
日本人の、特に女性の多くは整腸作用と深く関わりがある便秘に悩まされている方も多いでしょう。
便秘を解消したい!という方は『ズボラでも取り組める便秘に効果的な腸活方法を医師が紹介!』を参考にしてみてください。
【プロバイオティクスの特性①】アレルギーの軽減・抑制された報告されている
プロバイオティクスは、アレルギーの軽減・抑制に対して確かな効果があると、多くの研究結果が発表されています。
カッリオマキ博士らが「アトピー性皮膚炎の既往歴がある妊婦に、妊娠末期と産後にL・ラムノサスGG株(プロバイオティクスの一種)が入ったカプセルを継続摂取させ、その妊婦から生まれた赤ちゃんが2歳になるまでのアトピー発症に伴う湿疹が緩和される」と報告して以降、世界アレルギー機構からプロバイオティクスの使用を推奨するガイドラインまで登場したほどです。
近年では、花粉症・アレルギー性鼻炎・気管支喘息などの患者にアレルゲンにさらされた時に引き起こされる症状を緩和する治験も進められているようです。
ただ残念なことに、プロバイオティクスの抗アレルギー作用について臨床的な証拠の蓄積は多くても、プロバイオティクスの菌株・投与期間・量などの条件が異なるなどの理由から、メカニズムには不明な点が多くある状況です。
プロバイオティクスの使用を推奨するガイドラインにも「その証拠は強くない」と記載されています。
しかし、アレルギーの軽減・抑制を確かに報告する研究も多くあるため、プロバイオティクスのアレルギー作用を信じながら、プロバイオティクスが含まれた食品を継続的に摂取しながら、メカニズムが判明するのを待っていても良いでしょう。
【プロバイオティクスの特性②】がんの再発防止に有効とする報告事例が上がっている
実は、乳酸菌が持つがん予防作用に着目した多くの研究が行われているのはご存じですか?
研究を報告したグループ | プロバイオティクスががんの再発防止の有効性を示した事例 |
阿曽佳郎教授らグループ | 表在性膀胱がんの術後の再発抑制作用について臨床実験を行った。術後1年間LcSの再発が「通常摂取するプラセボ薬摂取群の非再発率:54.9%」<「非発生率79.2%」という良好な結果を報告。 |
内藤誠二教授らグループ | 表在性膀胱がんの内視鏡切除術後の再発予防として「抗がん剤膀胱内注射+LcSを服用する群」と「抗がん剤膀胱内注射のみの群」の無作為比較試験を行った。 LcSを服用する群の非再発率59.9%>LcSを服用しない群の非再発率74.6%の結果が出たため、LcSの有効性が示されました。 |
症例対照研究(調査研究) | 40〜55歳の乳がん患者306例と年齢・住地域がマッチする662例の対照者を比較し、LcSを含む飲料を週に4回以上摂取している人はに乳がん発生率が低いという結果を得た。 |
※LcS=L・カゼイ・シロタ株
やや難しい言葉で書かせていただきましたが、まとめると、「プロバイオティクスを摂取することで、がんの非再発率が上がった」という研究結果が出ていると言うことです。
検証は十分ではありませんが、これからも続々とプロバイオティクスの有用性を示した報告事例が上がることでしょう。
【プロバイオティクスの特性③】メンタルヘルスの維持・改善の臨床研究がすすめられている
プロバイオティクスが精神・神経系に及ぼす影響についても研究もされています。
マウス | ラット | ヒト | |
ビフィズス菌 | 焦燥・認識ストレスが改善した報告事例あり。 | 情動やストレスに対する改善作用報告あり。 | |
乳酸桿菌 | 抑うつ症状改善作用の報告事例あり。 | 情動やストレスに対する改善作用報告あり。 |
マウス・ラット・ヒトのメンタルに対し、プロバイオティクスであるビフィズス菌や乳酸桿菌に改善作用があると、報告されています。
しかし、ラットで有効性が上がっているL・ラムノラス株はヒトの臨床研究で抑うつ作用改善が認められませんでした。
さらに、2004~2017年にわたり実施された乳酸菌やビフィズス菌による不安改善作用に関する12の臨床研究を総括したメタアナリシス(複数の研究の結果を統合し、分析すること)では、プロバイオティクスとプラセボ(効果がない薬を投与すること)と優位な差は認められませんでした。
2つの事例から、動物からヒトへの臨床研究が難しく、実証が進んでいないことがわかります。
動物からヒトへの、プロバイオティクスの転用法・活用法が見つかると、一気に研究が進むことでしょう。
プロバイオティクスによる免疫獲得メカニズム
プロバイオティクスは様々な疾病の予防・改善に期待されており、腸内環境を善玉菌優位にする働きから免疫システムなどに間接的な影響を与えることが認められています。
つまり、プロバイオティクスは免疫システムを強化する作用があると研究されているのです。
ヒトの免疫システムとは
そもそも免疫獲得のメカニズムは、2種類あります。
1つ目は、獲得免疫です。
白血球に約5%存在するマクロファージの貪食作用により、体内に侵入した抗原を捕食。マクロファージは抗原を分析し、IL-10というたんぱく質を放出、B細胞から抗原に対する抗体を発生させて免疫を獲得する方法です。
これにより、同じ抗原が身体に入ってきても、すぐに対応できます。
2つ目は、自然免疫です。
マクロファージからIL-12というタンパク質が放出され、生まれながらに細胞傷害性を獲得しているナチュラルキラー細胞を発生させる方法です。
ナチュラルキラー細胞は、抗原に対する情報がなくても抗原に対して免疫を獲得できます。
いずれにしても、通常の免疫システムでは身体に一度侵入してきた細菌をマクロファージが貪食しない限り、免疫は獲得できません。
プロバイオティクスによる免疫獲得は、濃度が高いナチュラルキラー細胞が手に入る
プロバイオティクスのLcS(L・カゼイ・シロタ株)による免疫獲得と、通常の免疫システムによる免疫獲得には違いがあります。
大きな違いは、身体に有害な抗原が身体に侵入しなくても、免疫を得ることができる点です。
通常抗原は身体に害があるものですが、身体に良い影響を与えるプロバイオティクスのLcS(L・カゼイ・シロタ株)を摂取することで、抗原を摂取した時と同様にナチュラルキラー細胞が多く作られます。
LcSはもともとマクロファージの貪食作用によって溶かされにくい特性があることから、より濃度の高いナチュラルキラー細胞が生産され、免疫システムが活性化します。
さらに、抗原が発生した際、LcSはナチュラルキラー細胞を発生させていたIL-12を減らし、代わりにB細胞に連絡をして抗体を出させるIL-10を増やすことができます。
IL-10は抗原に対する抗体を増やすことができるため、抗原が発生した際にもすぐに迎撃できます。
プロバイオティクス(LcS)は過度な免疫刺激が起こりにくい!
プロバイオティクスのLcS(L・カゼイ・シロタ株)が免疫システムを活性化させると説明しましたが、実は、通常免疫システムが過剰になりすぎると身体には影響が出てしまいます。
しかし、プロバイオティクスであるLcSはマクロファージの貪食作用で殺菌されますし、そもそも増殖できないためそのまま体内で分解されます。
そのため、LcSは過度な免疫刺激を起こしにくく、病気を引き起こす心配も少ないという特性があります。
免疫システムが強化されることで得られる影響
免疫システムに直接作用するプロバイオティクスの効果は解説しましたが、その結果どんな身体に良い影響が得られるのかを、3つご紹介します。
①病原菌の増殖が抑えられる
②便秘が解消される
③大腸がんのリスクを減らせる
具体的にどうして身体を健康に導く効果が期待できるのかは、『【腸活の基本】腸内環境を整えるとどうなる?免疫力が高まる!』で解説していますので、合わせてご覧ください。
プロバイオティクスが含まれる主な食品
プロバイオティクスが含まれる食品・調味料一例
ヨーグルト | 乳酸菌飲料 | チーズ | 納豆 |
ぬか漬け | 味噌 | 甘酒 | キムチ |
青汁 | 牛乳 | ケフィア | コーンビーフ |
発酵したゆで卵 | マヨネーズ | マスタード | 西洋わさび |
プロバイオティクスは、基本的に発酵した食品に多く含まれています。
食べなじみのある食品にも多く含まれているため、食品+調味料で調理するなど、できる限り組み合わせて食べるといいですね。
特に、味噌・醤油など発酵食品を多く使う和食を中心に食事を摂ると腸活につながるでしょう。
しかし、毎日の自炊やプロバイオティクスのことを考えて献立を作るのが大変だという方は、サプリメントや乳酸菌飲料をストックするなど工夫が必要です。
特に私は飲みやすい「複合乳酸菌生産エキス エンテロ」をおすすめしています。
ヨーグルトなど、食品でプロバイオティクスを摂取することも大切ですが、プロバイオティクスのほとんどは2・3日で大便として排出されてしまうため継続して毎日食べなければ効果的とは言えません。
無理をして腸活のためにプロバイオティクスを摂ろうとするのではなく、ぜひサプリメントや乳酸菌飲料なども活用して毎日継続してプロバイオティクスを摂れるようにしてみてください。
まとめ
プロバイオティクスは、「腸に良い食習慣」そのものと言っても過言ではありません。
プロバイオティクスとは、生きたまま体内に送り届けることで善玉菌優位の腸内環境を作ってくれるため、特性として「①アレルギーの軽減・抑制された報告されている②がんの再発防止に有効とする報告事例が上がっている③メンタルヘルスの維持・改善の臨床研究がすすめられている」と報告されています。
プロバイオティクスをぜひ腸活に活用してみてください。
腸活は泌尿器科の私もすすめるほど、排泄にも深くかかわりがあるため、ぜひ継続して欲しいです。
排泄と腸活とのかかわりは『泌尿器科院長がなぜ「腸活」にこだわるのか?便と尿は健康に密接に関係している』で詳しく解説していますが、
監修:医療法人 神楽岡泌尿器科院長 渋谷のプロフィール
1961年(昭和36年) | 旭川生まれ |
1980年(昭和55年) | 道立旭川東高等学校 卒業 |
1988年(昭和63年) | 札幌医科大学 |
神楽岡泌尿器科では、「排尿に関してのかかりつけ医になりたい」という思いで日々診療に努めており、早期発見・早期治療ができるよう、患者本位で気軽に緊張せず受診していただける病院づくりに励んでいます。
当院を映像でもご覧いただけるため、雰囲気を知りたいという方はぜひご覧ください。
私は泌尿器科院長をしており、腸活によって得られる便秘解消作用と健康には深いつながりがあると考えています。
腸活と健康との関わりについての考えを『泌尿器科院長がなぜ「腸活」にこだわるのか?便と尿は健康に密接に関係している』でまとめているため、知りたい方はぜひご覧ください。
出版年数 | 著書・メディア掲載 |
2014年 5月15日 | |
2016年 5月10日 | |
2016年 10/27号 |
【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など