性器ヘルペスは感染力の強い性感染症の1種です。しかし、性器ヘルペスを性感染症と理解はしていても、どんな症状があるのかはあまり浸透していません。
そこで、性器がおかしいな?と思っている方に、性器ヘルペスの症状・治療方法を医師がわかりやすくご紹介します。
「性器がちょっとおかしい気がする…」
「水ぶくれができたんだけど、これって性感染症?」
「性器ヘルペスかもしれないけど、治療ってどんなの?」
「性器ヘルペスって、家族にうつるの?」
などなど、性器ヘルペスの疑問を性感染症のスペシャリストである泌尿器科スタッフが、細かく解説していきます。
性器ヘルペスとは
性器ヘルペスとは性感染症の一種で、単純ヘルペスウイルスが原因で性器に症状が出ることをいい、口唇や顔面などの上半身に症状がでた場合、口唇ヘルペスと名称が変わります。
性器ヘルペスに一度なってしまうと、単純ヘルペスウイルスが下半身の神経節にとどまり続けます。潜伏し続けて症状が落ち着いたとしても、免疫力が下がっただけで再活性化し、症状が出たり、パートナーに移してしまったりすることも。
性器ヘルペスに感染しても約60%の人は症状が出ないので気づけない場合が多く、知らず知らずのうちに感染を広める可能性もある性感染症です。
男性の性器ヘルペス症状
性器ヘルペスの症状 | ||
症状が出る部位 | 症状 | |
症状 | 足の付け根~太もも | 水ぶくれ・リンパ節の腫れや痛み |
性器 | ひりひり感・むずがゆさ・灼熱感・痛み・残尿感・おしっこが痛い・水ぶくれ・潰瘍 | |
お尻(肛門) | かゆみ・水ぶくれ | |
再発する際の前駆症状 (症状が出る前の症状のこと) | ・腰痛 ・下半身のしびれ ・性器に違和感がある(ピリピリ・ヒリヒリ) |
性器ヘルペスは、セックスなどで感染してから2~12日間で発症します。
症状が最も出やすいのは亀頭(ペニスの先端)・包皮・陰茎体部などの性器ですが、お尻や太ももにも症状が出ることもあります。
性器へルペスに1度かかってしまうと、原因となった単純ヘルペスウイルスが体内にとどまり続けてしまうため、再発する可能性がありますが、再発に気づけない方も多いです。
理由として、初感染した際は症状が強く出がちのためセルフチェックで症状に気が付く方も多くいらっしゃいますが、再発した場合は初感染時よりも比較的症状が軽く、再発の回数を重ねるたびに症状は軽くなって行くためです。
しかし、個人差があるため一概に初回の症状が強いとも言えません。感染に気が付かないほど症状が軽度の場合もあるため、人によってバラツキがあります。
治療を行わなくても1~3週間程度で症状がなくなるケースもありますが、ウイルスは身体に残り続けているため治ったわけではありません。ストレスや疲労などにより免疫力が低下したタイミングで、再び症状が現れる場合もあります。
再発する際は、再発前に腰痛・下半身のしびれ・性器に違和感が出てくるため、再発に注意しましょう。
性器ヘルペスの潜伏期間
性器ヘルペスは、感染の機会があってから2〜10日の潜伏期間があります。
潜伏期間の間は症状がでませんが、潜伏期間内に性行為を行った際はパートナーにも感染するリスクがあります。
性器ヘルペスの原因・感染経路
性器ヘルペスは、症状の有無に限らず、あらゆる性行為で感染リスクがあります。
- キス
- オーラルセックス
- セックス
- 共用部からの感染 (タオルや便座など)
- 出産時の母から新生児への感染(産道を通しての感染)
1番感染リスクが高いのは、性器ヘルペスの症状が出ている方との性交渉です。特に、男性は女性よりも再発リスクが高いと言われています。
性器ヘルペスの検査・診断方法
性器ヘルペスの検査は主に血液検査で、5日程度で検査結果が出ます。
性器ヘルペスが検査可能になるタイミングは、症状が1度でも出現した後です。
症状は可能性のある性交渉から2~10日程度で出始めるため、症状が出た後の受診をおすすめします。
性器ヘルペスの治療
性器ヘルペスの治療は主に内服薬と塗り薬で、基本的に抗ヘルペスウイルス薬を使用します。
初感染時で症状が重症になったときや全身的な症状がある時は、入院して治療を行います。治療には抗ヘルペスウイルス薬を使用しますが、点滴静注薬や飲み薬などを、症状や状況に応じて使い分けます。
再発時の場合、初感染時よりも症状が軽いことも多いですが、初感染同様に抗ヘルペスウイルス薬を使用します。飲み薬や塗り薬などを、症状や状況に応じて使い分けます。
しかし、性器ヘルペスの再発が起きている方は、発症を予防する薬を内服することで再発リスクを減らす治療を行います。
何度も性器ヘルペスを繰り返している方は、症状が自然と消えるのを待つのではなく、1度医師に相談してみても良いでしょう。
性器ヘルペスの予防方法・再発防止
性器ヘルペスにかかったことがない方は、予防が大切です。
1度かかった方も再発の可能性があるため、発症するリスクを減らすように気を付ける点をご紹介します。
●性器ヘルペスの予防方法
性器ヘルペスにかかったことがない方の予防方法は、性器ヘルペスに感染している方との性行為を避けることです。
コンドームを付けていても、太ももの付け根や肛門周囲に症状が出ている場合は感染リスクがあるため、完全に防ぎきれません。キスやオーラルセックスでも感染リスクがあるため、症状がある方との性行為は控えましょう。
●性器ヘルペスの再発防止
性器ヘルペスの再発防止策は、免疫力の低下を防ぎ、性器ヘルペスの症状が出ている方との性行為を避けることです。
性器ヘルペスはウイルスによる性感染症のため、自然治癒や薬による治療で症状が消失したとしても、身体から消えるわけではありません。
1度性器ヘルペスになってしまった場合は、風邪・ストレス・過労などによる免疫力の低下や、性器への刺激が原因で再発する可能性があります。
- 疲労
- 他の性器感染症(局所の皮膚領域を冒す)
- 月経
- アルコール多飲
- 強い日光への暴露
- 免疫低下状態(体の免疫が正常に機能しない状態)
- 長時間のストレス
- 紫外線
- セックスによる皮膚の摩擦や損傷 など
免疫力を下げないよう、生活習慣を正すことからはじめると良いですね。
しかし、いきなり生活習慣を正すといわれても、「具体的にどうすると、生活習慣が治るのかわからない…」という方がほとんどでしょう。
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身体の免疫は60%が腸内で作られているため、『腸の働きをもとに戻す活動=腸活』とカンジダの再発予防との相性はピッタリ。
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性器ヘルペスは再発を繰り返す病気です!気にすぎないようにするのも大切
性器ヘルペスは、1度感染すると完全には治らない病気です。
パートナーや家族に移さないかと過分に心配されている方もいらっしゃいますが、性器ヘルペスにかかっても、症状が出ていない時にいつもと変わらずにパートナーと性行為をされる方がほとんどです。
性器ヘルペスに1度かかってしまったとしても、パートナーに必ずしもうつるわけではありません。
あくまでも、性器ヘルペスの症状が出ている際は気を付けるべきですが、症状が出ていない時にはあまり気にしないようにしましょう。
再発する前の症状がある場合は、性行為を控える程度にすると良いですね。
- 腰痛
- 下半身のしびれ
- 性器に違和感がある(ピリピリ・ヒリヒリ)
性器ヘルペスのよくある質問
性感染症は他人にしゃべりづらいため、相談できずに1人で悶々と考えがちです。
性器ヘルペスはパートナーや家族にうつしてしまうリスクがぬぐいきれないため、不安も大きくなりやすいです。少しでも不安解消の手助けができたらと思い、よくある質問を4つまとめました。
ぜひ、参考にしてください。
口唇ヘルペスは性器ヘルペスになりますか?
A.なることもあります。
例えば、口唇ヘルペスに感染している人とオーラルセックスを行うと、口唇に単純ヘルペスウイルスが性器について感染することもあります。
他にも、自身が口唇ヘルペスにかかっていて、単純ヘルペスウイルスに触れた手で陰部を触わり、口唇ヘルペスが性器ヘルペスになってしまう可能性があります。
性器ヘルペスは自然に治りますか?放置するとどうなるの?
A.症状が自然に治ることはありますが、ウイルスはなくなりません。
放置すると症状は徐々になくなって行きますが、その間に、家族やパートナーにうつってしまう危険性はあります。
治療により症状を抑えたり・発症期間を縮めたりすることができるため、早期受診・早期治療を受けると良いでしょう。
性器ヘルペスは市販薬で治りますか?
A.性器ヘルペスの市販薬はありません。
性器ヘルペスの症状に対する薬は病院に受診し、処方が必要です。オロナミンを幹部に塗る方もいますが、悪化する可能性があるため、ひかえましょう。
何度も再発してしまいます。どうしたらいいでしょうか?
A.再発の頻度を減らす・予防する治療もあります。医師に相談しましょう。
性器ヘルペスは1度かかってしまうと、再発のリスクが出てきてしまいます。1年のうちに何回も症状が出てしまう方は、かかりつけ医に相談してみましょう。
まとめ
性器ヘルペスは症状が自然治癒することもあり、症状が軽い方は放置しがちです。しかし、1度性器ヘルペスにかかると、性器ヘルペスを引き起こすウイルスは身体に残り続けてしまうため、再発防止のために生活習慣を見直す余地がある方も多くいらっしゃいます。
受診を面倒に思っても、症状を長い間放置することで分泌物からウイルスの感染リスクを高めてしまうため、「もしかして…」と少しでも思ったら、泌尿器科へ受診しましょう。
監修:医療法人 神楽岡泌尿器科院長 渋谷のプロフィール
1961年(昭和36年) | 旭川生まれ |
1980年(昭和55年) | 道立旭川東高等学校 卒業 |
1988年(昭和63年) | 札幌医科大学 卒業 |
神楽岡泌尿器科では、「排尿に関してのかかりつけ医になりたい」という思いで日々診療に努めており、早期発見・早期治療ができるよう、患者本位で気軽に緊張せず受診していただける病院づくりに励んでいます。
当院を映像でもご覧いただけるため、雰囲気を知りたいという方はぜひご覧ください。
出版年数 | 著書・メディア掲載 |
2014年 5月15日 | |
2016年 5月10日 | |
2016年 10/27号 |
【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など