健康に対する意識の高まりから健康診断や人間ドックを受ける人が増えています。
多くの方が「尿酸値が高い」ことを指摘されているようで、当院でも心配で受診に来られる方が多くいらっしゃる現状です。
いまは何の症状がなくともどんな病気や症状を引き起こすのかなど、尿酸値が高いままだと自分の身体の何がどうなってしまうのかがわからずご不安な方のために、尿酸値が高いとどうなるのか原因やリスクについて説明していきます。
尿酸値はなぜ高くなるの?
体内で尿酸がつくられ過ぎたり、不要となった尿酸がうまく体の外に排泄されなくなることで血液中の尿酸の濃度が高くなります。
尿酸は、「体内で合成された量+食べ物から摂取した量=おしっこで排出される通常の量」になれば問題ありません。
しかし尿酸値が高くなってしまったということは、「体内で合成された量+食べ物から摂取した量」が多くなっている状態ということです。
そもそも尿酸とはプリン体を分解したゴミ
尿酸という名前から、「尿」の「酸」では?と勘違いされやすいのですが、尿酸とは物質名で、プリン体を分解した時に出るゴミのようなもの。
尿酸のもととして食品に含まれる「プリン体」が有名ですが、実は食品のプリン体からつくられる尿酸は全体の20%に過ぎず、残りの80%は体内でつくられるエネルギーの燃えカスです。
できた尿酸は、尿の中に排泄され、体内の尿酸の量(尿酸プールといいます)は常に一定に保たれています。
尿酸値が高くなると起こりうる4つのリスク
尿酸値が高くなると起こりうるリスクは、大きく4つあります。
- 腎障害(陣痛風)
- 痛風発作
- 痛風結節
- 尿路結石
尿酸値が高くなると尿酸の結晶が沈着し、体内の様々な部位で痛みや機能不全につながってしまいます。
それだけでも恐ろしいですが、尿酸値(血液中の尿酸の濃度)が、7.0mg/dLを超えたら「高尿酸血症」と呼びます。
今はなんの自覚症状がなくても、高尿酸血症は様々な合併症の黄色信号です。
高尿酸血症の状態が長く続くと、尿酸の結晶が体のあちこちに沈着し始め、激痛で知られる「痛風発作」をはじめとする様々な症状を引き起こします。
最近では、高尿酸血症は高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病や慢性腎臓病(CKD)を合併しやすいことがわかってきました。
生活習慣病のベースにはメタボリックシンドロームといわれる内臓脂肪型肥満の代謝異常がありますが、高尿酸血症も全身の代謝異常のひとつの現れともいますね。
高尿酸血症はこれらの疾患と密接に関係し、動脈硬化が心筋梗塞・脳卒中などを起こすし、リスクを高めているといわれているため、尿酸値が高い期間が続けば続くほど危険性が増すでしょう。
尿酸値を低くするには食生活と運動が効果的
尿酸値を下げるためには、食べ物・飲み物に気を付け、適度な有酸素運動が効果的。
「尿酸値が高い」と言われると、とかくプリン体の制限にばかり目が向きがちですが、大切なのは尿酸値を上げやすい生活習慣全体を見直すことです。
見直す方法を食べ物・飲み物・運動別に紹介していきます。
①尿酸値を下げる食べ物
体重を落として肥満を解消すると、尿酸値が下がる方が多いです。しかし、尿酸値が高いからといって、食べてはいけないものはありません。
いろいろなものを少しずつ食べて、①標準体重×25〜30kcaを目安に適正カロリーを守り、②プリン体のとりすぎに注意し、③野菜、海藻、牛乳などのアルカリ性食品を積極的にとるといいでしょう。
②尿酸値を上げない!飲み物の飲み方
ビールにプリン体が多いというのは有名な話ですが、ビールに限らずアルコールそのものが尿酸値を上げる原因になります。
尿酸値の高い人はなるべくお酒を控えてください。
また、水分は2L/日摂取しましょう。
尿酸は尿から排泄されるため、尿の量が増えれば、それだけ体内の尿酸が体の外へ出やすくなります。
心不全や腎不全で水分制限の指示を受けているような場合を除いて、1日2Lを目安に積極的に水分を摂るといいです。
③適度な有酸素運動を取り入れる
尿酸値を下げるためには、適度な有酸素運動がおすすめ。
肥満の解消、尿酸値の高い人に合併しやすい生活習慣病の予防にもつながるため、ウォーキングのような軽い有酸素運動を継続して行うのが効果的です。
しかし、プリン体の分解を促進させる激しい運動は、かえってエネルギーの燃えかすである尿酸を増やし、尿酸値を上げる原因になるので、あくまでも軽い運動を継続的に行いましょう。
毎日の生活習慣に取り入れられるように、自分で癖づける方法を模索してみてください。
まとめ
尿酸値が高い原因やリスクについて説明しました。
尿酸値が高いと体内のあちこちで尿酸の結晶が沈殿し、痛みや機能不全を引き起こしかねません。
尿酸が高いと高尿酸血症になり、高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病や慢性腎臓病。さらには、心筋梗塞・心筋梗塞にもなりかねないため、尿酸値が高い状態を続けないようにしましょう。
尿酸値を下げるには、野菜を中心としたアルカリ性の食べ物を食べ、お酒を控えて、マラソンや水泳など有酸素運動を週3回程度行う運動習慣を身に付けると効果的です。
一気にすべてを行うのは難しいかもしれませんが、できるところから少しずつ実践していきましょう。
また、激しい痛みがあるなど、すでに日常生活に支障が出ている方は、病院に受診すると解決策が見つかるかもしれません。
【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など