女性の尿のトラブルを引き起こす過活動膀胱について、ここまで7回にわたってご紹介してきました。下記はその一覧です。
- 1. トイレが近い原因は過活動膀胱の可能性があります
- 2. トイレが近い原因となる「過活動膀胱」の症状
- 3. 10人に1人が「トイレが近い」症状を経験しています
- 4. 過活動膀胱は膀胱の異常な働きによって起こる病気です
- 5. 泌尿器科では病状を知るために問診・検査が行われます
- 6. 過活動膀胱に対する主な治療法
- 7. 自宅で簡単にできる! 「トイレが近い」過活動膀胱の治療方法
過活動膀胱は「トイレが近い」「尿をもらしてしまった」などのトラブルの原因となる病気です。しかし、このような尿のトラブルの原因は過活動膀胱以外にもあります。今回は、過活動膀胱以外に尿のトラブルを引き起こす病気をご紹介します。
過活動膀胱以外の尿のトラブルの原因
「トイレが近い」「尿をもらしてしまった」など、過活動膀胱と似た尿のトラブルを起こす病気として、腹圧性尿失禁や感染症、子宮の病気、がんなどがあります。
これらの病気の症状や原因について、簡単にご紹介します。
1. 腹圧性尿失禁
尿道などを支えている骨盤低筋などの働きが弱くなることで尿道をうまく締められなくなり、尿もれを起こす病気です。過活動膀胱と腹圧性尿失禁の両方の症状が見られる方もいます。
腹圧性尿失禁の症状
次のような強い腹圧がかかるような動作をした時、尿がもれてしまいます。
- ・咳をする、くしゃみをする、笑う
- ・走る、テニスやゴルフなどのスポーツをする
- ・重い物を持ち上げる
- ・坂道や階段を昇り降りする
腹圧性尿失禁の患者さんの数
40歳以上の女性の8人に1人が、腹圧性尿失禁の症状を経験しています。とくに、出産を経験した女性に多くみられます。
腹圧性尿失禁の原因
お腹に強い力(腹圧)がかかった場合、「骨盤低筋」という筋肉が膀胱と尿道を支えることで、尿道が締まり、尿がもれるのを防いでいます。
腹圧性尿失禁では、この骨盤低筋が弱くなったり傷んだりすることによって、尿道をうまく締められなくなり、尿もれを起こします。
加齢や出産、女性ホルモンの低下が関係しています。
腹圧性尿失禁の治療
腹圧性尿失禁の治療方法はいくつかあります。
まずは、薬による治療です。尿道を締める働きがある薬(ベータ刺激薬)などを用います。
そして、手術などによる治療です。手術をして尿道をつりあげる方法(尿道スリング手術)や、コラーゲンを注入して尿道の筋肉を強くする方法などがあります。
2. 感染症(膀胱炎や尿道炎など)
尿道から細菌が入って炎症が起こる病気です。頻尿や尿意切迫感の他に、発熱や排尿痛などがみられます。
3. 子宮内膜症
子宮内膜に似た組織が子宮以外の場所にできる病気です。排尿の他に、下腹部痛や排尿痛などが起こります。
4. 心因性の頻尿(神経性頻尿)
精神的な問題が原因で、頻尿や尿意切迫感が起こる場合があります。「トイレのことを心配すると尿意を感じる」、「緊張した時にトイレに行きたくなる」というのは、その一つの例です。
5. 膀胱結石
膀胱内に結石(尿の中のカルシウムやシュウ酸などが固まったもの)ができる病気です。頻尿の他に、血尿や排尿痛が出ることがあります。
6. 膀胱がん
膀胱にできるがんです。痛みを伴わない血尿、頻尿、排尿時の痛み、残尿感などがみられます。
尿のトラブルの原因を突き止めるために病院で検査を受けましょう
尿のトラブルを起こす病気として、過活動膀胱以外にもさまざまなものがあることをご紹介してきました。同じような症状でも、見た目だけではどのような病気かは分からないというのはおわかりいただけたでしょうか。
尿のトラブル・悩みを解決するためには、その原因を特定することが大切です。原因特定のためには、泌尿器科を受診し検査をしていただくことが必要不可欠となります。
「トイレが近い」「尿をもらしてしまった」などの悩み・トラブルをお持ちの方は泌尿器科にお気軽にご相談ください。
【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など