「尿が出きってない……」「トイレ後にじわっときた……」
いわゆる残尿感でお悩みではないでしょうか?
残尿感があると、どうしても気になってしまいますが、通勤・通学、仕事や授業中など、トイレに行けない状況ではとても辛いものです。
深夜2時頃、気持ちよく眠っていたのに何度もトイレに……。睡眠不足で生活に支障をきたしているという方も多いと思います。
そこで今回は、つらい残尿感の原因として考えられる病気TOP5を解説します。
皆さんの残尿感解消の手がかりになれば幸いです。ぜひ読んでみてください。
【1位】膀胱炎
残尿感の原因として最も考えられる病気、膀胱炎。女性がなりやすく、一度発症してしまうと繰り返してしまうことが多い病気です。
放っておくと、辛い痛みや高熱、さらには、腎盂腎炎を引き起こす可能性がありますが、医師による処置をした後、規則正しい生活をこころがけることで予防できます。
膀胱炎の症状
- 何度もトイレに行きたくなる
- 排尿後に痛みがある
- 残尿感
- 尿が白く濁ったり、血が混じることがある
膀胱炎の原因
尿道から膀胱に侵入した細菌が感染することで、膀胱に炎症が起こります。
もともと膀胱内には少量の細菌が存在し、細菌への抵抗力がありますが、疲労やストレスなどで体力が落ち抵抗力が弱くなることで、細菌が感染・増殖し、膀胱炎になります。
また、トイレを我慢することも良くありません。トイレの回数を減らそうと水分を控えたりすると、膀胱内の菌が増殖し、膀胱炎になりやすくなってしまいます。
膀胱炎の原因となる細菌には、ブドウ球菌や大腸菌、セラチア菌、プロテウス、肺炎桿菌、腸球菌などが見られ、その中でも大腸菌が80%前後を占めるといわれています。
動画でもわかりやすく解説しています!
膀胱炎の治療
基本的には、感染した細菌を調べ、それぞれに合わせた抗生物質や抗菌剤を投与し、治療していきます。
軽い膀胱炎であれば、水分を多く摂ることで排尿とともに細菌が外へ排出され、自然に治っていくこともしばしば。ですが、症状が改善されたからといって、自己判断で内服を止めたりせず、医師の指示にしたがってください。
次の症状が当てはまる方は要注意!医師にご相談ください。
(1)再発を繰り返す場合
なんらかの病気(例えば膀胱結石,糖尿病,子宮筋腫,膀胱がんなど)が隠れていることがあります。
(2)悪寒・高熱・腹痛がある場合
炎症が腎臓に及んでいる可能性もあります。
間質性膀胱炎について詳しく解説した記事はコチラ
【2位】前立腺肥大症(男性のみ)
世の男性を困らせている「前立腺肥大症」は、残尿感や頻尿など、さまざまな症状を及ぼしています。50歳で30%、60歳で60%、70歳で80%、80歳で90%に見られ、高齢になるほどかかりやすくなる病気です。
前立腺肥大症の症状
- 残尿感:排尿後、まだ尿が残っている感じがする
- 昼間頻尿:トイレが近い
- 夜間頻尿:夜中に何度もトイレに起きる
- 尿線途絶:尿が途中で途切れる
- 尿意切迫感:急に尿意をもよおし、もれそうで我慢できない
- 尿意低下:尿の勢いが弱い
- 腹圧排尿:おなかに力を入れないと尿が出ない
前立腺肥大症の原因
前立腺が肥大する原因はまだはっきりとは解明されていません。しかし、「男性ホルモンの働き」が関与していることは間違いありません。
中高年になって男性ホルモンを含む性ホルモン環境の変化が起こることにより、前立腺が肥大すると考えられています。
コチラの記事も参考になります。よかったら読んでみてくださいね。
前立腺肥大症の治療
食べ物や水分の摂り方などの生活指導を行って経過観察したり、症状に合わせて投薬治療をします。
尿を出しやすくするα1受容体遮断薬(α1ブロッカー)、男性ホルモンの作用を抑えて前立腺を小さくする抗男性ホルモン薬、その他漢方薬、植物エキス薬剤などの治療薬があります。
薬物治療を行っても、症状の十分な改善が得られない場合や、血尿、腎機能障害などが発生した場合、手術を行ないます。
前立腺肥大症チェックシート
「I-PSS」の合計点が
8点以上の方→あなたは前立腺肥大症の可能性があります。
- 0~7点の場合→軽症
- 8~19点の場合→中等症
- 20~35点の場合→重症
【3位】神経因性膀胱
神経因性膀胱とは、脳から膀胱・尿道への指令が正常にできなくなくなることで起こる病気のこと。60~80代の男女に多く、排便や性機能にも支障をきたすことがあります。
神経因性膀胱の症状
- 頻尿
- 尿失禁
- 尿が出にくい
- うまく出せない
神経因性膀胱の原因
病気や怪我による脳や神経の損傷により、脳からの膀胱や尿道への指令が正常に伝達できなくなることで起こります。
脳梗塞、脳卒中、脊髄損傷や、痴呆やパーキンソン病、腰椎間板ヘルニア、脊髄小脳変性症などが原因となります。
神経因性膀胱の治療
まず治療すべきは、原因となる疾患から。
膀胱の働きを促進する薬や、膀胱と尿道の神経協調を改善する薬を使っていきます。効果がない場合は、尿道カテーテル留置や間欠的自己導尿を使うこともしばしば。
脳神経外科など、多方面での受診が必要になることもございます。
【4位】前立腺炎 (男性のみ)
いわゆる「性病」などによって引き起こされがちなこの病気。前立腺炎は、20~30代の男性がなりがちな病気です。
前立腺炎の症状
- 頻尿
- 残尿感
- 排尿痛
- 会陰部から睾丸にかけて不快な鈍痛
前立腺炎の原因
尿道からクラミジア、マイコプラズマ、大腸菌、腸球菌などが前立腺内に入り込み、増殖することで、炎症が起こります。
もともと前立腺には細菌への抵抗力がありますが、油断は禁物です。疲労やストレスなどで体力が落ち、抵抗力が弱くなったために前立腺炎になることは少なくありません。
また、慢性前立腺炎の場合、細菌による炎症ではなく、血行障害が原因の場合があります。いずれの場合も、規則正しい生活習慣は基本中の基本ですよ。
前立腺炎の治療
感染した細菌にあわせた抗生物質や抗菌剤、前立腺の腫れやむくみを撮る生薬成分や抗浮腫剤などの投与をします。
また、感染原因となる菌が見つからない場合、膀胱にしっかり尿をためてから排尿する、軽い運動をするなど生活習慣の改善で症状が改善することがあります。
【5位】骨盤性器脱(女性のみ)
骨盤性器脱は、更年期以降の女性に多くみられる病気です。日本ではまだ正確な頻度は報告されていませんが、お産を経験された女性の約半数が、生涯のうちに何らかの形の骨盤臓器脱を生じるとされるほど多い疾患なんです。
骨盤性器脱の症状
下がってくる臓器によって症状が異なります。
膀胱が下がっている場合
- 尿失禁
- 頻尿
- 排尿困難
直腸が下がっている場合
- 便秘
- 排便困難
子宮がさがっている場合
- 陰部に何か物があるような感じ
- 陰部が引っ張られているような、あるいは重苦しい
どのような骨盤性器脱でも認められることは、横になると症状が楽になることです。
朝起きてから午前中はまだいいが、午後になると調子が悪いという方は要注意。
骨盤性器脱の原因
出産、肥満、慢性の咳、重いものを持ち上げたりする仕事、便秘、排便や排尿時のいきむ(ふんばる)習慣などの積み重ねが、下へ下へと圧力をかけていきます。
腹圧が上昇し骨盤底に強い負荷が加わることや、 老化、閉経などによる骨盤底筋群という筋肉の衰えにより、内臓が支えられなくなると発病に繋がってしまいます。
骨盤性器脱の治療
症状が悪化している場合は手術が必要で、その後リハビリをしなくてはいけませんので早期の受診がオススメです。
現在症状がなくても「いきんで」排尿する習慣のある方は、トイレにいきたくなったら今一度我慢してください。限界になってから行くと力をかけずに排尿できます。いきまないで自然にスーッと排尿(おしっこ)。これが理想です。
このような心がけが骨盤性器脱の予防にもなりますよ。
また、コチラの記事のように筋力を鍛えることで症状が改善する場合があります。よかったら試してみてくださいね。
【監修者】神楽岡泌尿器科 院長「渋谷 秋彦」
札幌医科大学卒業後、大手病院勤務を経て2003年に「神楽岡泌尿器科」を開業。前立腺肥大の手術「HoLEP」を1,000例以上行った実績があり、日帰り手術を実現している国内有数の医師。出版「気持ちいいオシッコのすすめ」など